アリババのビジネスモデル-商品を売る力と、事業を動かす技術を売る

アリババのビジネスモデル-商品を売る力と、事業を動かす技術を売る

IT・Webサービス

アリババは誰からお金を受け取る?

いい商品を売るために集客と注文処理の両方が必要という導入の場面。

いい商品があっても、買い手に届かなければ売れません。ネットで商売を広げるには、集客と、注文を処理する技術が必要です。

アリババは、商品を売る力と、事業を動かす技術を売ることで収益を得ています。

定説の発想は、事業を伸ばすために販売網とITを自社で整えることです。逆説の発想は、他社が整えた売場と技術をサービスとして使うことです。

この記事では、アリババの仕組みを次の3つの視点で読み解きます。

  1. ECの課金:出店者が集客と販売支援へ支払う。
  2. 海外の卸取引:商談と取引の手間を減らして稼ぐ。
  3. クラウドとAI:事業を動かす計算資源を提供する。

ここで取り上げるのは、海外仕入れサイトのAlibaba.comを含むアリババグループです。中国のTaobao・Tmallと、企業向けのAlibaba Cloudを中心に見ていきます。

公式の企業紹介では、現在の事業の重点を商取引と「AI+クラウド」に置いています。私にとって、この二つは「商売を伸ばしたい企業が、足りない力を借りる場所」です。アリババの企業紹介

出店者には商品を届ける相手が必要です。クラウドを使う企業には、注文や業務を処理する計算能力が要ります。どちらも、顧客企業の事業を支えるサービスが課金の対象になります。

お金の行き先を知る入口は売場を使う人と、サービス料金を払う人を分けて見ることです。

下の図は、登場人物と、提供・お金・情報のやり取りを一枚にまとめたものです。上の3段は取引の関係、下の「逆説の構造」は、起点の困りごとに対する定説と別の解き方を示します。

お金は黄色の円、商品は緑の円、情報は水色の四角で読み、サービスは矢印に添えた言葉で確認してください。続く本編では、先ほどの3つの視点から図の内容を説明します。

  • 人:買い手、出店者・供給企業、クラウド利用企業、運営するアリババグループが登場します。
  • 仕事・サービス・モノ:出店者が買い手へ商品を届け、アリババは検索・集客・販売支援やクラウドを提供します。
  • お金:買い手は出店者へ商品代金を払い、出店者はアリババへ広告・販売支援料金を払います。企業はクラウド利用料を払います。
  • 情報:買い手はECへ検索・注文情報を渡し、出店者は商品情報を掲載します。
アリババのビジネスモデル図解(登場人物と、提供・お金・情報の流れ)
ビジネスモデルの仕組みを整理した図解

Taobao・Tmallは何で稼ぐ?

商品代金とアリババが受け取るサービス料金の行き先を分ける。

Taobao・Tmallでは、出店者が買い手に出会い、販売するためのサービスへ支払います。

2026年度の年次報告書では、中国のEC小売収益の過半を顧客管理サービスが占めています。これは広告や販売支援などをまとめた呼び方です。出店者は、商品を見つけてもらい、購入につなげるために料金を払います。

主な課金の基準は、広告のクリック、表示回数、掲載期間、成立した販売です。販売額に応じる取引手数料も含まれます。2026年度年次報告書・収益モデル

買い手にとっては、商品を探し、比較し、注文する場です。一方、出店者にとっては、自分の店だけでは届きにくい客へ商品を見せる場になります。同じ売場でも、使う目的が立場によって変わるのです。

商品代金とサービス料金

例えば、出店者の商品を買い手が購入する場面を考えます。商品代金を受け取るのは販売した出店者です。アリババは、その取引を支えるサービスの対価を受け取ります。

お金の行き先は、次のように分かれます。

  • 出店者:買い手から商品の販売代金を受け取る。
  • アリババ:出店者から広告や販売支援の料金を受け取る。
  • アリババの直販事業:自ら販売した商品の売上を計上する。

Tmall Supermarketなどは、年次報告書に掲載された直販の例です。したがって、アリババの稼ぎ方を説明するときは、仲介する売場と自ら販売する事業を分ける必要があります。

私が重視するのは広告費や手数料に見合う販売機会です。客が集まるだけでなく、商品が選ばれることが必要です。出店者の採算が悪化すれば、広告への支出を続ける理由も弱くなります。

売場の大きさを競うだけでなく、出店者が売れる状態を保つことが、サービス収益を支えます。

Alibaba.comは何を減らす?

海外の卸では紹介に加え商談後の作業を支援することが料金の理由になる。

Alibaba.comは、海外の買い手と供給企業をつなぎ、商談や取引にかかる手間を減らします。

一般消費者の買い物と、企業の仕入れでは必要な情報が違います。企業間の商談で確かめるのは、仕様、数量、納期などです。商品を見つけた後にも、取引を進めるための仕事が残ります。

年次報告書によると、供給企業が年会費を払って利用するのが会員制度です。さらに、集客、店舗管理、取引の保護、物流などの追加サービスを使えます。会員料金に加えて、付加サービスと顧客管理サービスが収益源です。

ここで買い手が求めるのは、条件に合う仕入れ先です。供給企業は、自社の商品に関心のある企業との商談を増やしたい。双方の参加理由がそろって、売場に取引の機会が生まれます。

掲載から取引の支援へ

供給企業が商品情報を載せ、買い手が探せるようになれば、最初の接点ができます。その後の店舗運営や受注を助けることが、追加料金を払う理由です。

この事業の特徴は「載せられる」から「取引を進められる」へ広げることだと私は考えています。商品一覧を作るだけでなく、商談後の仕事まで支援するからです。供給企業は、個々の機能が営業や運営に役立つかを判断して使えます。

中国国内のECと海外卸では、買い手も注文の単位も異なります。共通点は、売り手の商売に必要な接点と作業を支えていることです。

この視点は、紹介サービスや業務支援にも当てはまると思います。紹介後に日程調整や見積もりで止まるなら、接点を増やす以外にも支援できる仕事があります。顧客が実際に進めたい作業は、料金の理由を考える手がかりです。

Alibaba Cloudは何を売る?

企業が計算・保存・AIをサービスとして利用し利用料を払う関係を伝える。

Alibaba Cloudは、企業が事業を動かすための計算・保存・AIなどをサービスとして提供します。

企業がネットサービスを運営するには、データを保存し、処理する能力が必要です。クラウドを使う企業は、その能力をサービスとして借ります。公式の料金説明では、利用した分に応じる従量課金と、契約期間に応じる前払い契約があります。Alibaba Cloudの課金方式

買い手を集めるECと、計算資源を提供するクラウド。商品は違いますが、企業がすべてを自前で整える負担を減らすという共通点があります。

年次報告書では、クラウドの技術は中国の商取引事業の大規模で複雑な需要から発展したと説明しています。自社の商売を動かすために育てた技術が、他社への提供につながったのです。

AIの成長と投資の負担

2026年6月期の決算では、ECとAI関連事業の区分を組み直しています。クラウドと半導体設計をまとめた部門と、AIモデル・アプリの部門を分けました。以前の年次報告書とは、部門の集計範囲が変わっています。

同四半期の公式決算で、成長と負担を併せて見ると次のようになります。

  • AI Cloud and Compute Servicesの売上:484億3,700万元。前年同期比45%増で、AI関連商品の採用が成長を支えました。
  • グループの設備投資:676億7,800万元。AIなどの計算設備へ、大きな資金を投入しています。
  • グループのフリーキャッシュフロー:446億7,000万元の流出。クラウド設備への支出増が主な要因です。

2026年6月期の公式決算

企業から利用料を受け取る一方、計算設備や技術を整える資金も必要です。

売上の成長と、設備に投じる資金をセットで見ることが大切だと私は思っています。長く使われるサービスにできるかが、投資を回収するうえでの焦点になります。

アリババは、売場を貸すサービスと、商売や業務を動かす技術の両方を提供する企業です。

あなたの仕事に置き換えると

研修サービスの応用例と顧客が使う前後の手間を考える場面。

アリババは、顧客企業が自前で整える負担の大きい売場と技術を、使えるサービスにして提供しています。

企画や営業で参考にできるのは、顧客が商品を買った後の仕事にも目を向けることです。いい機能を渡しても、使い始めるまでに手間がかかれば、顧客の仕事は進みません。

例えば、私は小さな研修サービスなら、研修の内容と受講後の運用を分けて考えます。研修で知識を伝えた後、担当者が現場へ定着させるための仕事が残るからです。案内文や振り返りの進め方を整えれば、顧客の準備を減らせるかもしれません。

そのとき確認したいのは、顧客が何の手間を減らしたいかです。何でも付け足すと、提供側の負担も増えます。繰り返し求められる作業に絞れば、他の顧客にも使えるサービスを考えやすくなります。

自分の仕事に当てはめるために、次の3つの問いに答えてみてください。

  1. 顧客が商品を使う前後に、何で困っていますか。回答例:「社内への説明」。
  2. 自社で繰り返し行う仕事のうち、他社にも役立つものは何ですか。回答例:「毎月の振り返り」。
  3. 顧客は、どの手間が減れば料金を払いたいと思いますか。回答例:「導入の準備」。

答えが一つ見つかれば、提案する内容が具体的になります。「便利です」と広く伝えるより、誰の何が進むのかを示せるからです。顧客が助かったと判断する場面まで想像すると、商品の説明と料金の理由がつながります。

私は、アリババから学べるのは規模の大きさより、顧客企業の商売を支える仕事を見つける視点だと思います。自社で身につけた力も、他社の負担を減らせるなら、新しい提供先を考える材料です。

あなたの顧客は、どの手間が減ると次の一歩を進められますか?

参考

定説と逆説は、事業者の成長課題を考えるための比較として置いています。図は出店者による販売とクラウドを中心に示し、直販・物流・決済の詳細は省略しています。