chocoZAPのビジネスモデル。鍛える覚悟より、通える気軽さを売る

chocoZAPのビジネスモデル-鍛える覚悟より、通える気軽さを売る

人材・生活サービス 監修:合同会社パンディング

chocoZAPは何の負担を減らした?

運動バッグと着替えを前に準備をためらう会社員

運動したいと思っても、着替えや靴を用意して出かけるところで止まってしまう。仕事帰りなら、なおさらです。

chocoZAPは、鍛える覚悟より、通える気軽さを売るジムだと私は考えています。

定説の発想は、運動専用の時間と装備を整えて、ジムへ通うことです。逆説の発想は、普段着で短時間だけ立ち寄れるようにして、生活の途中に運動を入れることです。

運動を始める負担に対する二つの解き方として、比べてみましょう。chocoZAPの公式サイトは、服装自由、靴の履き替え不要、スマホでの入会と利用を案内しています。

この記事では、chocoZAPの仕組みを次の3つの視点で読み解きます。

  1. 1. 収益:月額会費で、店舗を使える状態を売る。
  2. 2. 選ばれる理由:準備を減らし、通う目的を増やす。
  3. 3. 運営:受付を省き、清掃と修繕を支える。

この記事の内容を、下の1枚にまとめました。
上の3段は登場人物と、提供・お金・情報のやり取りを示し、下の「逆説の構造」は記事の主張を示します。
起点は困りごと、定説はよくある発想、逆説は別の解き方で、本編は先ほどの3視点から図を説明します。
サービスの提供は、図の矢印に添えた言葉で読んでください。

  • 人: 運動初心者などの会員が利用・支払いを行い、RIZAP株式会社が運営します。
  • 仕事・サービス・モノ: RIZAPが店舗とアプリを運営し、会員へ提供するのはトレーニング設備などの利用です。
  • お金: 会員がRIZAPへ、店舗などを利用する対価として会費を払います。
  • 情報: 会員がアプリへ予約や店舗への評価を送り、運営側が店舗改善に使います。
chocoZAPの会員・店舗・アプリ・運営者の関係
ビジネスモデルの仕組みを整理した図解

月額会費は何の代金なのか

複数会員の会費が店舗の賃料・設備・清掃修繕を支える関係

chocoZAPの基本的な売上は、会員が店舗などを利用するために支払う会費です。

公式料金ページにある代表的なプランは、次の二つです。

  • 月額プランは税込3,278円。毎月の定額で利用できます。
  • 年額プランは税込32,780円。年間分をまとめて支払います。

月額プランはトレーニングの回数ごとに課金する方式ではありません。会員は、来店のたびに支払いをする必要がありません。

運営側は会費をもとに、店舗の賃料や設備、清掃、修繕などを賄う必要があります。月額料金の低さを支える条件は、会員数と店舗の維持費の釣り合いです。

同じ店舗の費用を複数の会員の会費で支えるため、会員が減ると採算が厳しくなると考えられます。店舗を増やすだけでなく、それぞれの店舗で会費を払う人を保つ必要があります。

会員数と売上の間にあるもの

RIZAPグループの2027年3月期第1四半期決算短信は、chocoZAPの会員数を公表しています。

  • 2026年8月13日時点で116.7万人。会員の規模を示す数字です。
  • 2026年7月17日に2,000店舗を突破。利用できる拠点の広がりを示します。

ここで、会員数に通常の月額料金を掛けると、売上を大きく見誤るおそれがあります。同短信が挙げる理由は、キャンペーンの無料期間などで、獲得した会員が売上になるまで時間がかかることです。

私は、加入者の多さに加えて、料金を支払う会員がどれだけ残るかが、この事業を読む要点だと考えています。無料期間の先に必要なのは、会費を払ってでも使いたいと思える店舗です。

会員の獲得と、会費の積み上がりには時間差があります。

安さを入口にしても、継続する理由が弱ければ毎月の売上は安定しません。宣伝で集める力と、利用後の満足を保つ力を一緒に問われる課金方式です。

運動以外の目的を増やす理由

運動・美容・休息という同じ会費の異なる使い道

chocoZAPは、準備の負担を減らす一方で、会費の範囲に複数の利用目的を組み込んでいます。

公式サイトが紹介するのは、トレーニングに加えてセルフエステやセルフ脱毛、マッサージチェアなどです。運動をする日も、気分を切り替えたい日も、同じ会員契約の中に立ち寄る理由を持てます。

ただし、設備は店舗ごとに異なります。カラオケやランドリーなどは一部店舗限定で、ジム以外はアプリから予約して利用する案内です。

この予約は、利用できる時間を会員同士で分けるための手続きになります。追加料金なしという説明だけで、全設備をいつでも使えると理解すると、実際の体験とずれてしまいます。

一つの会費に複数の使い道

運動専用の契約なら、運動する気が起きない日は、その契約を使う理由も薄れます。美容や休息にも使える点は、その日の気分に合わせて目的を選べる利点です。

私は、この選択肢が「今日は何をしに寄ろうか」と考える余地をつくると思っています。運動だけに強い決意を求めず、店舗へ向かうきっかけを増やす設計です。

一方、サービスが増えるほど、機械の維持や予約管理も必要になります。多機能にすれば必ず会員が長く残る、とまでは今回の資料から言えません。

増やしたいのは、サービス名の数より、会員が実際に使える理由です。

行ける店舗に希望の設備があるか、予約が取れるか、故障せず使えるか。その条件がそろって、複数の目的を一つの会費にまとめる利点が生まれます。

企画の目線では、機能を足す前に「既存の顧客は、どんな日に使わなくなるか」を見ると役立ちます。足す機能が利用の空白を埋めるのか、管理だけを増やすのかを分けて考えられるからです。

無人の店舗は誰が支える?

店舗の清掃と機器の修繕をする作業者の概念イラスト

受付をアプリに任せても、清掃や修繕までなくなるわけではありません。

公式アプリの案内では、入退館やサービス予約などをスマホで行えます。会員が自分で手続きできるため、来店のたびに受付を待つ形とは違う使い方です。

一方で、設備が動き、店内が清潔であってこそ、短時間でも立ち寄る意味があります。故障の確認に時間がかかれば、せっかく減らした利用の負担が、別の形で戻ってきます。

2026年3月期の決算短信が説明するのは、内製化やデジタル化による店舗運営の効率化です。会社は、それらにより、店舗が赤字にならずに運営できる売上の水準が下がったとしています。

ここから分かるのは、低い会費を支える仕事が、店舗の裏側にもあることです。接客を省いた分だけ利益になる、と単純には説明できません。

集めた声を店舗の改善へ

2027年3月期第1四半期決算短信には、アプリ内で店舗の状態を把握する機能の刷新が記されています。店舗体験の点数と自由記述のコメントを集め、改善につなげる取り組みです。

会員の予約や評価は、会費とは別の流れです。予約は設備を使うための情報で、評価は運営側が店舗の状態を知る材料になります。

私は、この情報の戻り道が無人運営の弱点を補うと考えています。現場に常に受付担当がいる形を減らすなら、別の方法で不具合に気づき、直す仕事へつなぐ必要があるからです。

通いやすさは、入会前の宣伝と入会後の店舗管理で支えられています。

なお、同四半期のchocoZAPは、会員が増えても減収減益という結果です。同短信では成長投資やキャンペーンの影響などが説明されており、会員拡大と当期の利益改善は分けて確かめる必要があります。

店舗の品質改善で会費収入を支えながら、出店や広告への投資を回収する。chocoZAPの運営には、この両方の時間を扱う難しさがあります。

あなたの仕事に置き換えると

申し込み前の準備を減らす方法を考える企画担当者

chocoZAPは、利用前の準備を軽くし、会費で使える場を用意し、その場を維持する運営を組み合わせています。

安い料金、普段着での利用、複数のサービスは、一見すると別々の工夫です。しかし、始める負担を減らし、払った会費を使う理由をつくるという点でつながっています。

反対に、故障や予約の取りづらさが重なると、気軽に使うという約束が崩れます。入口で減らした負担を、利用後の待ち時間や手間で増やさないことも必要です。

自分の仕事に当てはめるために、次の3つの問いに答えてみてください。

  1. 1. お客様が使い始める前に、何を準備していますか。

    例は「申し込みに必要な資料集め」です。

  2. 2. 最初の目的がない日にも、使う理由はありますか。

    例は「相談がなくても読める短い事例集」です。

  3. 3. 手続きを減らした後、誰が使える状態を保ちますか。

    例は「毎週、案内の古い情報を直す担当者」です。

私は、新しい機能を考える前に、お客様が利用を先延ばしする小さな準備を一つ探したいと思います。それを省けるなら、顧客の努力を増やさずに、使い始めやすくできるかもしれません。

あなたの商品は、お客様のどんな準備を一つ減らせそうですか。

参考

定説と逆説の対比、サービスを組み合わせる意味は、上記の公式情報をもとにした私の分析です。図解は会員と運営者の主要な関係に絞り、年額払いとFC加盟店の取引は省略しています。