くまモンのビジネスモデル

くまモンのビジネスモデル-利用料を取らず、熊本の商品が売れる入口を増やす

地域・公共

くまモンは、どこでお金を生む?

消費者が売場で地域を知る場面

売場でくまモンの付いた商品を見ると、「この代金の一部は熊本県に入るのだろうか」と気になります。

くまモンは、国内のイラスト利用料を無料にし、熊本の商品が売れる入口を増やす仕組みを持っています。

定説の発想は、熊本県が広告枠を買い、県産品の魅力を伝えることです。逆説の発想は、民間の商品に無料で登場し、売場を熊本PRの接点にすることです。

この記事では、くまモンの仕組みを次の3つの視点で読み解きます。

  1. 無料にする理由:企業の参加と熊本PRをつなぐ
  2. お金の行き先:商品代金は販売事業者に入る
  3. 続ける条件:審査と県産品への接続を保つ

この定説と逆説は、同じ販路拡大の課題を比べるための私の見方です。国内の無料許諾を中心に、海外利用の条件と、成果を測る際の注意点も見ていきます。

熊本県のイラスト利用案内は、利用目的に県のPRや県産品の販路拡大を挙げています。商品を製造・販売するのは事業者、利用を認める条件を決めるのは県です。県がすべての商品を仕入れ、販売する形とは別の分担になります。

無料にしているのはイラストの利用料です。商品づくりや配送、店の運営は事業者が担います。参加する企業にとっては、自分の商品を売る仕事と熊本を知らせる仕事が重なるのです。

この記事の内容を、次の1枚にまとめました。上の3段は登場人物と、提供・お金・情報のやり取り、下は「逆説の構造」です。起点は困りごと、定説はよくある発想、逆説は別の解き方を表し、続く本編で3つの視点を掘り下げます。

  • 人:商品を買う消費者、製造・販売する事業者、利用を管理する熊本県です。
  • 仕事・サービス・モノ:県が事業者に国内の無料利用を許諾し、事業者が消費者に商品を提供します。
  • お金:消費者が販売事業者へ払うのは、商品代金です。
  • 情報:事業者が県へ利用申請と売上報告を渡します。
国内の商品販売と無料許諾の図解
ビジネスモデルの仕組みを整理した図解

無料にすると、誰が参加しやすい?

県の許諾から商品づくりと売場への展開

国内の無料許諾は、事業者が商品にくまモンを使う際の金銭的な負担を下げます。

熊本県の利用規程は、イラスト等の利用料を当分の間、無料と定めています。事業者が使える範囲は、許諾された商品や広告です。利用料を支払い続ける方式と比べれば、試す際に考える費用が一つ減ります。

たとえば食品を売る事業者なら、中身、包装、価格、販売先を考える必要があります。そこにキャラクターの使用料が加われば、売れる見込みと費用を見比べる判断も増えるでしょう。無料許諾は、その判断の一部を軽くする方法だと私は考えています。

商品の売場がPRの接点に

県が広告を出す場合、伝える場所や期間を県自身が用意します。一方、商品にくまモンが付けば、販売する事業者の売場も名前や姿に触れる場所です。買い物の途中で熊本を思い出す入口を、民間の商品と一緒に増やせます。

ここで事業者の動機は、自分の商品を選んでもらうことです。県の動機は、熊本を知る人や県産品の販売機会を増やすことにあります。両者の目的が重なる場所に置いたのが、無料許諾だと私は考えています。

県側も、許諾の管理やPRの費用を負担する側です。県はくまモン隊の管理運営業務の委託先を公募しています。無料提供を支える仕事も、このモデルの一部です。

企業の販売活動に、熊本PRを重ねるのが、この方式の読みどころです。参加する企業は、自分の商売を続けながら地域を知らせられます。

もちろん、売場に置かれるには商品として選ばれる理由が必要です。味、使いやすさ、価格などが購入に結び付いて初めて、販売事業者も続ける意味を持てます。無料許諾は、その商品力を生かす入口として働きます。

1,503億円は、誰の売上なのか?

商品代金の帰属と県・企業の目的の違い

公表される利用商品売上高は、民間企業・団体の商品販売を最終小売価格で推計した合計です。

熊本県が公表した2025年の調査結果では、くまモン利用商品の売上は次の規模でした。

  • 年間売上高:約1,503億円。民間の商品販売が広い規模で続いています。
  • 前年比:92.3%。前年を下回り、売上は毎年増えるとは限りません。
  • 累計売上高:約1兆7,725億円。2011年の調査開始から積み上げた合計です。

商品を買う人は、代金を販売事業者へ払います。その事業者が売上から賄うのは、仕入れや製造、販売にかかる費用です。この売上を生む取引は、商品の売買です。国内の無料許諾は、この販売を支える条件として働きます。

販売規模と、県への還元

年間売上を読むときは、まず誰の商品が売れた数字なのかを確かめる必要があります。次に見たいのは、県内の製造や原料の購入にどれだけつながったかです。商品全体の販売額と、地域に残るお金は分けて追う対象です。

また、購入理由にはキャラクター以外の要素もあります。商品の品質、販売店の立地、販促活動も、選ばれる理由です。くまモンが増やした売上だけを知るには、別の比較や調査が要ります。公表値は、利用商品がどれだけ売れたかを読む材料です。

売上を受け取る企業と、PRを進める県を分けて見ると、ビジネスモデルが理解しやすくなります。企業は商品販売を続ける理由を持ち、県が目指すのは、熊本の認知や販路拡大です。同じ商品から、異なる成果を求めています。

行政のキャラクターを民間企業の収益モデルと比べる際にも、この分担は手がかりです。私は、使用料の多さだけで評価するより、誰の販売を後押しし、どの地域へつながったかを見る方が、この取り組みの目的に合うと考えています。

無料でも、審査を残す理由は?

申請審査と地域への接続の条件

無料許諾を熊本のために働かせる条件は、利用目的と地域へのつながりを保つことです。

公式の利用の手引きでは、通常申請に熊本PRにつながる要素を求めています。県と事業者が目的を共有するために必要なのが、利用条件です。

たとえば食品への利用では、県内の生産や製造との関係を確認します。県外製造食品には原則と特例があり、判断材料は県産原料による販路拡大やPR効果などです。地域と結び付く条件を設けることで、人気が商品販売だけに使われる状態を避けようとしていると読めます。

海外では利用条件が分かれる

公式の海外利用案内は、一般の海外利用にはADKエモーションズへの申請と一定の利用料が必要と説明しています。一方、要件を満たす県内企業等の輸出商品は、無料利用の支援対象です。販売先と商品の条件に応じて、許諾の窓口と料金が分かれます。

私は、この違いにも県産品の販路を広げる意図が表れていると思っています。制度の狙いを捉える手がかりは、どの事業者のどんな販売を後押しするかです。

商品販売と熊本への接続を、条件で結び付けることが継続の支えです。無料にして接点を増やすだけでは、地域を知ることや県産品を買うことへ進むとは限りません。伝える内容と利用条件まで組み合わせてこそ、熊本PRの手段になります。

公式のくまモンランドは、県全体に人や企業が集まることを目指しています。商品に触れた後、県内のスポットやツアーを知る入口にもなるサイトです。購入の接点と現地への関心をつなぐ、もう一つの展開として捉えられます。

あなたの仕事に置き換えると

読者の仕事への仮想応用と3つの問い

くまモンの仕組みは、参加の負担を下げ、他の事業者の販売活動と自分の目的を重ねる方法です。

自分の仕事に当てはめるために、次の3つの問いに答えてみてください。

  1. 相手が使いやすくなるよう、無料にできるものは何ですか。回答例は「商品の説明素材」です。
  2. 無料で渡した後、どの販売につなげたいですか。回答例は「取扱店での商品購入」です。
  3. 自分の目的から外れないために、何を条件にしますか。回答例は「商品名と購入先の表示」です。

たとえばメーカーが取扱店へ説明素材を渡すなら、店側の準備が減り、商品を紹介しやすくなります。メーカーは、その紹介から購入へ進むことを目指します。相手が使う理由と、自分が渡す理由を同時に考えられる例です。

無料にする対象は、相手が使うほど自分の販売にもつながるものから考えるとよさそうです。逆に、利用が増えるたびに対応費用が重くなり、購入へ進む道も弱いなら、無料で広げる範囲を絞る判断が必要になります。くまモンの方法を応用する際にも、必要な条件です。

成果の見方も、先に決めておくと判断しやすくなります。素材を使った店の数を見た後に、紹介された商品への問い合わせや購入を追えば、接点が販売へつながったかを確かめられます。利用件数と販売の結果を、順に見ていく考え方です。

私は、無料提供を考えるときほど、その後にお金を受け取る人を具体的にしたいと思っています。参加者が自分の商売を続けられ、提供側も目的に近づけることが、協力の理由です。自社だけで接点を増やす負担も、そこで分け合えます。

相手が使うほど、あなたの販売につながるものは何ですか?

参考

取得日はすべて2026年10月11日です。

図解は国内の商品販売と無料許諾を中心に描いています。定説と逆説、および仕事への応用は、公式資料をもとにした私の分析です。