ワークマンのビジネスモデル-プロ向けの機能を、日常の選択肢にする

ワークマンのビジネスモデル-プロ向けの機能を、日常の選択肢にする

小売・アパレル

ワークマンはなぜ普段着に選ばれる?

ワークマンはなぜ普段着に選ばれる?

雨の日の通勤や週末の外遊びで、動きやすい服を手頃に買いたい。そんな場面にも、ワークマンの商品は選択肢に入ります。

ワークマンは、プロ向けに培った機能を日常へ広げ、商品開発と加盟店の販売を組み合わせています。

定説の発想は、一般向けの服を一から開発することです。逆説の発想は、プロ向けの機能を日常の服に生かすことです。

この記事では、ワークマンの仕組みを次の3つの視点で読み解きます。

  1. 商品開発:現場で培った機能を普段着に生かす。
  2. 売り場:使う場面に合わせて見せ方を変える。
  3. 収益:本部と加盟店が商品と販売を分担する。

公式のビジネスモデル紹介は、働く人向けの品質と低価格を重視しています。現在は、一般客の日常生活やレジャーも販売の対象です。

私は、この広げ方に注目しています。新しい客層を狙うとき、既存の商品で解ける困りごとを探す発想です。作業着として磨いた性能が、別の買い物の理由にもなります。

たとえば、体を動かしやすい服を求めるのは、現場で働く人だけでしょうか。通勤や家事でも、同じ機能が役立つ場面はあります。用途を変えると、性能を説明する言葉も変わります。

誰の、どの場面で役立つかが、商品の広げ方を決めるのです。

次の図は、この記事の内容を一枚にまとめたものです。上の3段で登場人物と、提供・お金・情報のやり取りを確認できます。下の「逆説の構造」は、起点となる困りごとに対する定説と逆説の比較です。

本編では、図にある商品開発・売り場・収益を順に読み解きます。

  • 人:服を使って代金を払う購入者、販売する加盟店、開発・調達を担う本部、供給するメーカーです。
  • 仕事・サービス・モノ:メーカーから本部、加盟店、購入者へ衣料品が渡り、本部は加盟店の運営を支援します。
  • お金:購入者は加盟店へ購入代金を払い、加盟店は本部へ商品代金と加盟店収入、本部は取引先へ仕入代金を払います。
  • 情報:加盟店の販売データは、本部が商品や店舗の判断に使う材料です。
Aタイプ加盟店を中心にしたワークマンの商品・代金・販売データと店舗支援の流れ
ビジネスモデルの仕組みを整理した図解

プロの機能をどこへ広げる?

プロの機能をどこへ広げる?

ワークマンは、作業服で培った開発ノウハウをカジュアル衣料にも生かしています。

同社の公式発表には、作業服の知識を普段着に応用する方針が示されています。仕事用に育てた機能を、生活の別の場面に届ける方法です。使う人が変わっても、動きやすさや快適さを求める理由はつながります。

分かりやすい例が、日常でも着られるシャツです。公式発表では、従来の高機能シャツに着回しにくさがあったと説明しています。そこで、シルエットや裾の扱いを見直し、洗濯時の汚れ落ちや伸縮性にも対応しました。

注目したいのは、機能と着やすい外観を一緒に考えている点です。店頭で服を選ぶ人は、性能に加えて、職場や街で着られるかも判断します。機能が届くまでには、見た目という入口があります。

PBで商品を育てる

PBは、販売企業が自社ブランドとして企画する商品です。ワークマンの2026年3月期決算説明資料には、次の実績があります。

  • PB商品売上高1,501億30百万円:自社ブランド商品が販売の大きな柱です。
  • PB比率71.9%:チェーン全店売上の約7割をPB商品が占めます。

商品を自社で企画できれば、客の使い方に合わせて改善する余地が生まれます。機能、デザイン、価格を、別々の課題として扱わずに調整できるからです。これは私が、PBの比率から読み取る強みです。

ただし、同じ性能でも使う場面によって必要な形は変わります。現場に適した服を普段着へ広げるには、生活者が着たくなる外観が必要です。先ほどのシャツは、その調整を具体的に示しています。

読者の仕事でも、専門の顧客に向けて磨いた説明や手順があるはずです。それが別の相手の困りごとに使えるなら、新しい提案の出発点になります。

WORKMAN Plusは何を変えた?

WORKMAN Plusは何を変えた?

WORKMAN Plusは、働く人向けの機能を、アウトドアやスポーツの買い物として伝えました。

2019年の公式投資家向け資料は、当時の展開を具体的に説明しています。仕事向けの商品を、趣味や入門用として買う一般客がいたことが、客層を広げる手掛かりでした。既に起きている使い方を、新しい売り場へつなげています。

その資料では、当時のWORKMANとWORKMAN Plusの商品は共通と説明されています。違いとして挙げられているのは、店舗の外観や什器、レイアウトです。新しい使い方を伝えるために、客が商品を見る場所を変えたわけです。

仕事の売り場で見る雨具と、週末の外遊びの売り場で見る雨具。同じ機能でも、自分が着る場面を想像できるかで印象は変わると私は考えています。商品の特徴を、買う人の言葉へ置き換える仕事です。

今日の客層に合わせる

現在の公式案内で、Workman Colorsは快適な普段着を掲げています。作業服は扱わず、女性客に加えて男性やファミリー層へも対象を広げています。売り場ごとに、誰に何を選んでほしいかを変えているのです。

機能を保ちながら、入口を変えるという視点で見ると、業態の違いが理解しやすくなります。仕事の必需品を探す人と、普段着を探す人では、最初に見たい商品が違います。店名や陳列は、その違いに応えるための手段です。

客層が広がるほど、商品の見せ方にも調整が要ります。仕事で使う服を探す人が、必要な品を迷わず買えることも大切です。新しい客のための変更と、既存客の買いやすさを両立する必要があります。

企画や営業にも、同じ視点は使えると思います。専門家向けの機能名を並べるより、相手が困る場面から話すほうが用途は具体的です。提案の中身を磨くことと、伝わる入口を作ることは、一緒に進められます。

本部と加盟店はどこで稼ぐ?

本部と加盟店はどこで稼ぐ?

本部の収入は、加盟店への商品供給、加盟店からの収入、直営店の販売で成り立ちます。

購入者が服の代金を払う先は、買い物をした店舗です。本部は商品の開発・調達・物流と店舗支援を担い、加盟店が地域の売り場を運営します。加盟店の売上と、本部の会計上の収入は、お金の行き先を知るための別々の数字です。

公式のAタイプ加盟条件では、月間の粗利益を一定の比率で分配します。以下は粗利益の配分で、各者が受け取った後の経費負担まで含めた利益とは区別が必要です。

  • 加盟店40%:店を運営する側の収入となり、人件費などを賄います。
  • 本部60%:本部側が家賃や広告・物流などを支えるための収入です。

役割を分担し、店の粗利益を分ける方法です。売り場が売れる商品を揃えることは、加盟店と本部の双方の収入につながります。店舗の経費や在庫負担も、手元に残る額を左右する条件です。

数字の範囲を分ける

2027年3月期第1四半期の決算説明資料では、次の実績が公表されています。対象は2026年4〜6月です。

  • 加盟店商品供給売上高297億69百万円:本部から加盟店への商品販売です。
  • 加盟店からの収入139億83百万円:加盟店販売に伴って、本部が受け取る収入を表します。

商品供給には、仕入れに必要なお金が伴います。店舗を支える物流や人件費も、継続して必要な支出です。収入の増加が最終的な利益になるまでには、こうした費用を賄う必要があります。

同じ最新資料では、天候不順も四半期の販売計画に影響した要因です。機能性のある商品でも、季節や在庫の置き方によって売れ方は変わります。安さを続けるためには、商品を選ぶ判断と販売の見通しが欠かせません。

私は、商品の開発と地域での販売をつなぐところに、この収益モデルの要点があると考えています。商品、売り場、お金の行き先を合わせて見ると、低価格を支える仕事まで理解できます。

あなたの仕事に置き換えると

あなたの仕事に置き換えると

ワークマンの強みは、専門の現場で育てた機能を、別の客が買う理由につなげることです。

新しい顧客を探すとき、最初から商品を増やす方法はあります。一方で、今ある商品の強みと、それを必要とする別の場面を組み合わせる方法も選択肢です。ワークマンの歩みは、後者を考える手掛かりになります。

自分の仕事に当てはめるために、次の3つの問いに答えてみてください。

  1. 今の顧客が一番助かっていることは何ですか。回答例:「迷わず選べる」。
  2. その助けを必要とする別の人は誰ですか。回答例:「初めて担当する人」。
  3. その人へ、どんな言葉で伝えますか。回答例:「最初の判断が楽になる」。

私は、まず最初の問いを確かめるのがよいと思っています。顧客が助かっていることが分かれば、別の人にも役立つ理由を探せます。自分たちが得意だと思うことと、相手が買う理由が重なる部分です。

機能の名前より、使う場面を伝えることにも意味があります。「操作が簡単」という説明より、「初めての担当でも迷わず選べる」と言うほうが、助かる人を想像できます。専門性を保ちながら、伝える言葉を近づける方法です。

もう一つ、届ける相手が増えた後の負担も見ておきたいところです。説明、仕入れ、接客を誰が担うかが決まれば、新しい顧客にも継続して応えやすくなります。ワークマンでは、本部と加盟店の分担が、その販売を支えています。

商品の強み、選ばれる入口、届け続ける担当。この三つを一緒に考えると、新しい用途の提案が具体的になります。

あなたが既に持っている強みは、まだ誰の日常に届いていないでしょうか。

参考

以下はいずれもワークマンの公式資料です。取得日は2026年10月8日です。

「定説」と「逆説」は、同じ生活者の希望を解く二つの方法として私が比較したものです。図はAタイプ加盟店を中心に示し、直営店の収益は本文で補っています。