
アフタヌーンティーのビジネスモデル-店で味わう、家でも楽しむ
アフタヌーンティーは何を売っている?

カフェで使った器が気に入り、家でも使いたくなる。おいしかった紅茶を、友人にも贈りたくなる。そんな気持ちを、次の買い物につなげてきたのがアフタヌーンティーです。
アフタヌーンティーの商売は「店で味わう、家でも楽しむ」を、飲食と雑貨の両方で支えています。
定説の発想は、暮らしを心地よくしたい人に、商品の機能やデザインを説明して選んでもらうことです。逆説の発想は、心地よい時間を先に過ごしてもらい、その時間に使う品を欲しくしてもらうことです。この比較は、私が同ブランドを読むために置いたものです。
この記事では、アフタヌーンティーの仕組みを次の3つの視点で読み解きます。
- 1. 選ばれる理由:器を使う時間まで具体的に伝える。
- 2. 売上の入口:飲食・自宅用・ギフトで購入機会をつくる。
- 3. 続ける条件:季節と会員制度で再訪の理由を育てる。
以下の図は、この記事の内容を1枚にまとめたものです。上の3段は登場人物と、提供・お金・情報のやり取りを示します。下の「逆説の構造」は、起点=困りごと、定説=よくある発想、逆説=別の解き方という意味です。本編では、先ほどの3つの視点で図を順に説明します。
- 人: 自分用に利用する顧客、贈るために買う顧客、ティールームとリビングの運営会社が登場します。
- 仕事・サービス・モノ: ティールームは顧客へ飲食と接客を提供し、紅茶・菓子を販売します。リビングは顧客へ食器などの生活雑貨を販売します。
- お金: 顧客はティールーム側へ飲食・食品の代金、リビング側へ雑貨の代金を払います。
- 情報: 顧客は各店へ注文を伝え、各店や公式アプリは商品・季節の企画を知らせます。

器の使い心地をどう伝えるのか

商品を眺めるだけでは分からない楽しさを、飲食の場で感じてもらえることが出発点です。
公式ヒストリーによると、ブランドは渋谷パルコパートⅢの第1号店から始まりました。ティールームで使用するカフェオレボウルを、隣のリビングで販売していたと記されています。
器の形を説明するだけでなく、飲み物を入れ、手に取り、会話をしながら使ってもらう。その経験があれば、家の食卓に置いたときの様子も思い浮かべやすくなります。私はここに、飲食と物販を組み合わせる意味があると考えています。
公式のブランド紹介も、衣・食・住を同時に提案するスタイルを原点に挙げています。紅茶や器を別々の商品として並べる以上に、どんな時間を過ごせるかが購入の手がかりになるのです。
家で使う場面が浮かぶ
たとえば、店で気に入った紅茶があっても、家でどう淹れるか分からなければ購入をためらいます。公式の持ち帰り商品ページには、お茶の特徴に加えて淹れ方も載っています。買った後の楽しみ方まで伝えれば、家庭で使い始める負担を減らせます。
この仕組みは、カフェを雑貨の無料展示場にする話ではありません。ティールームは飲食の代金を受け取る商売として成立させる必要があります。接客やお茶に満足できることが、持ち帰りたいという気持ちの土台です。
また、創業時の隣接販売が、現在の全店で同じ形になっているとは限りません。参考にしたいのは店舗の外形よりも、使ってよかった品を日常へ取り入れられるというつながりです。
飲食と雑貨はどこで売上になる?

飲食、食品の持ち帰り、生活雑貨という入口が、異なる買い物の場面を受け止めます。
公式の会社概要では、リビング側は株式会社ICL、ティールーム側はアイビーカンパニー株式会社の運営です。共通のブランド名でも、顧客が何に代金を払い、どちらの事業が受け取るかを分けて見る必要があります。
ティールームの店内飲食では、紅茶や料理、スイーツを提供して代金を受け取ります。公式メニューには季節の飲み物や食事が並び、お茶を飲む日にも、食事をする日にも選べる商品が用意されています。
食品の持ち帰りでは、紅茶や焼き菓子の販売が別の購入機会になります。たとえば公式の商品ページには、ティーバッグと焼き菓子を詰め合わせたギフトがあります。店内で過ごす本人に加え、贈り物を探す人も購入者になれるのです。
食卓へ持ち帰れる商品
特に分かりやすいのが、人気メニューの味を家で楽しむ商品です。公式ページには、マッシュルームサラダサンドを自宅で楽しむためのドレッシングや、季節のメニューをアレンジしたカレーが掲載されています。お茶だけでなく、食事にも持ち帰る接点があります。
一方、リビングは食器などの生活雑貨を販売します。紅茶を消費する機会と、器を買い替えたり贈ったりする機会は同じではありません。買う目的の違いを受け止めながら、日々のお茶や食卓という共通の場面へつなげられます。
私は、この幅がブランドを思い出す機会を増やすと考えています。ただし、飲食客の何割が雑貨を購入するかは確認できていません。両事業の売上比率や利益率も、今回確認した資料には示されていません。
収益を生む取引が複数あることと、各取引で十分な利益が出ることは別です。飲食では食材や人員、店舗の維持が必要になり、物販では仕入れや在庫、配送を賄う必要があります。
季節の企画が再訪を促すのはなぜ?

同じブランドへ戻る理由を、季節の楽しみと共通の会員制度でつくっています。
公式メニューでは、販売期間を区切った飲み物やスイーツが紹介されています。リビングの公式ページでも、クリスマス、迎春、作家とのコラボレーションが並びます。同じ店をのぞいても、前回とは違う発見があるという期待を持てます。
定番の紅茶が好きな人に、季節の香りを試す機会をつくる。いつもの食器を使う人に、贈り物を選ぶ場面を提案する。私は、こうした変化が、必要な物を買い足すとき以外にも接点を生むと考えています。
母の日の公式企画では、紅茶や菓子にティーチケットを組み合わせたギフトも展開されました。これは過去の販売例ですが、食品を贈ることと店で過ごすことを、一つの贈り物にまとめる方法が分かります。
買う場所が変わっても続く
現在のメンバーズ案内では、対象店舗の飲食・買い物とオンラインストアでポイントを貯め、使える仕組みが紹介されています。会員ステージに応じた特典や、先行試食などの機会も設けられています。一部の店舗・商品は対象外です。
飲食の日と雑貨を買う日が別でも、同じ会員として関係を続けられる。アプリから新商品や企画の案内を受け取ることもできます。共通ポイントは、次の買い物を同じブランド内で考えるきっかけになり得ます。
ただし、季節商品は企画するだけで売れるわけではありません。余れば在庫や廃棄の負担が生じ、複雑なメニューは店舗の仕事を増やします。ポイントや特典にも原資が必要です。
再訪や追加購入が増える効果と、それを支える費用を合わせて見ることが欠かせません。店と家での楽しさがつながらない商品を増やしても、この組み合わせの強みは育ちにくいはずです。
あなたの仕事に置き換えると

アフタヌーンティーから学べるのは、使ってよかった時間と、次に買える品を結び付ける考え方です。
店で飲むお茶、自宅で淹れるお茶、誰かへ贈るお茶。それぞれの購入には違う理由があります。その違いを捉えると、商品数を増やす前に、どこへつなげればよいかを考えられます。
自分の仕事に当てはめるために、次の3つの問いに答えてみてください。
1. 商品のよさを実感してもらう場面はどこですか。
例は「照明を点けた部屋で、読書を試す時間」です。
2. その場の満足を家へ持ち帰れる品は何ですか。
例は「試した明るさを再現できる卓上ライト」です。
3. もう一度選ぶ理由を何でつくりますか。
例は「季節ごとに変わる部屋づくりの提案」です。
この応用例で大切なのは、試す場と売る品のつながりです。読書が快適だった理由が照明にあると伝われば、家でも使いたい理由になります。理由が曖昧なまま関連商品を並べても、購入を勧められた印象が強くなるでしょう。
最初から店舗や会員制度を一式そろえる必要はありません。今ある接客や試用の場で、顧客が何を気に入ったかを確かめ、その満足を続ける品を提案することから始められます。試す場そのものの収支も、併せて確かめたいところです。
あなたの商品は、どんな「よかった時間」と一緒に思い出してもらえますか。
参考
- Afternoon Teaについて:ブランドの原点と衣食住の提案。
- アフタヌーンティーのヒストリー:第1号店、ティールームと器の販売。
- 会社概要:飲食と生活雑貨の運営法人。
- 季節メニュー:飲食商品と期間を区切った提案。
- テイクアウトアイテム:紅茶、菓子、ギフト、自宅向け食品。
- LIVING:季節商品とコラボレーション。
- Afternoon Tea MEMBERS:対象店舗・オンラインの共通ポイント、特典。
- 母の日に贈る、ティータイムギフト:2024年の販売例。
取得日はいずれも2026年11月3日です。定説と逆説の対比、購入機会への効果、仕事への応用は私の考察です。図解は顧客との主要取引を示し、仕入れ先との取引や法人間の精算は省略しています。
