アサヒグループのビジネスモデル

アサヒグループのビジネスモデル-一本の価値を磨き、世界の売り場で稼ぐ

メーカー 監修:合同会社パンディング

アサヒは一本のビールで何を売る?

アサヒは一本のビールで何を売る?

同じ売り場に並ぶビールでも、手が伸びる一本は人によって違います。味や飲む場面まで思い浮かぶ銘柄には、価格だけでは決まらない選ぶ理由があります。

アサヒグループは、一本の価値を磨き、世界の売り場で稼ぐ会社です。

成長の方法を比べると、定説の発想は、販売量を増やして売上を伸ばすことです。逆説の発想は、選ばれる理由を磨き、一本の売上単価と売る場所を増やすことにあります。

この記事では、アサヒグループの仕組みを次の3つの視点で読み解きます。

  1. ブランド:味と由来が、価格以外の選ぶ理由になる。
  2. 販売網:各地域の工場と販路が、ブランドを届ける。
  3. 利益:単価向上と供給・費用の管理を組み合わせる。

対象は、海外事業や飲料・食品を含むグループ全体です。その成長をけん引するビールを中心に、商品代金が売上になる道筋を追います。

店頭の販売代金と、メーカーが受け取る仕入代金を分けて見ることが出発点です。

以下は、この記事を一枚にまとめた図です。上の三段で登場人物と、提供・お金・情報のやり取りを示し、下の「逆説の構造」で記事の主張を表します。
起点は困りごと、定説はよくある発想、逆説は別の解き方で、本編も先ほどの三つの視点から読む構成です。

  • 人:買って飲食する消費者、販売する卸・小売・飲食店、製造・販売するグループ各社が登場します。
  • 仕事・サービス・モノ:グループ各社から流通・店舗へ、店舗から消費者へ商品が渡ります。モノは緑の円です。
  • お金:消費者は店舗へ代金を払い、流通・店舗は仕入先のグループ各社へ仕入代金を払います。記号は黄色い円の¥です。
  • 情報:流通・店舗からグループ各社へ届く注文です。記号は水色の四角で、図では卸を含む途中の取引をまとめています。
商品・購入代金・仕入代金・注文と、逆説の構造
ビジネスモデルの仕組みを整理した図解

2つのブランドが世界で選ばれる理由

2つのブランドが世界で選ばれる理由

ブランドは、飲む前から味や場面を想像できるようにし、一本を選ぶ理由をつくります。

公式ブランドページが現在グローバルブランドとして掲げるのは、Asahi Super DryとPeroni Nastro Azzurroです。日本とイタリアという由来を持ち、それぞれの品質やスタイルを世界へ届けています。

上期決算資料では、スーパードライの辛口の味と日本発の品質・革新性を伝える方針を説明しています。ペローニでは、イタリアのプレミアムブランドとしての印象を育てる方針です。

ここで私が注目するのは、同じ「高品質」でも、消費者が思い浮かべる内容を変えている点です。違いが具体的に伝われば、単なる価格比較から選ぶ理由を広げられます。

認知を購入につなげる

公式資料に登場する販促施策は、スポーツとの提携や体験型のイベントです。スーパードライはラグビーなど、ペローニはフェラーリとの提携を活用しています。

こうした接点は、名前を知るきっかけです。ただし、その場で興味を持った人が買える売り場や、期待する味の商品まで揃って初めて売上につながると考えられます。

2026年上期のグローバルブランド販売数量は、前年同期比で次の伸びでした。

  • スーパードライ:31%増。中国を中心に、複数市場で販売を伸ばしました。
  • ペローニ:7%増。英国を中心に、他の欧州市場でも拡大しました。

集計対象は各ブランドの母国市場を除いた販売数量です。海外の伸びを示す数値なので、日本国内を含むスーパードライ全体の成長率とは区別して読む必要があります。

「どんな味か」「どんな場面に合うか」を伝える活動が、販売を支える投資です。

海外の工場と販路は何を増やす?

海外の工場と販路は何を増やす?

各地域の工場や販路は、ブランドを継続して届けられる売り場を増やします。

アサヒグループの事業概要では、日本・東アジア、欧州、アジアパシフィックの各事業を説明しています。欧州では世界に展開する銘柄と、地域に根づく銘柄を組み合わせる方針です。

現地で知られた商品を持つことと、新しいブランドを売ることには接点があります。すでに取引する店へ別の商品を提案できれば、新規の営業先を一から探す負担を減らせるからです。

オーストラリアの公式事業紹介には、製造拠点や配送センターが掲載されています。各地で製造・販売するのは、ビールや炭酸飲料、水などです。

商品を増やすだけなら、売り場や配送の負担も増えます。だからこそ、どの商品をどの顧客へ届けるかを組み合わせる営業と、欠品させない供給の両方が必要です。

飲まない場面にも商品を届ける

アジアパシフィック事業では、酒類と飲料を組み合わせる戦略を掲げています。日本では三ツ矢やカルピス、食品ではミンティアなどもグループの事業です。

また、公式の事業方針は、低アルコールやノンアルコールなど周辺カテゴリーの拡大も重視しています。飲酒する日以外にも選べる商品を用意することが、消費者との接点を広げる方法です。

私は、この広がりを「同じ人にもっと酒を飲んでもらう」発想よりも、場面ごとに合う商品を届ける発想として捉えています。食事、休憩、人との集まりでは、欲しい飲み物が変わるためです。

世界で使うブランドと、地域ごとの品ぞろえの組み合わせが、販路を活用する鍵です。

一本の単価が上がれば利益も増える?

一本の単価が上がれば利益も増える?

利益を残すには、売上単価を高める取り組みと、供給・費用の管理を両立させる必要があります。

グループ各社は、出荷する商品の代金を取引先から受け取ります。その売上から原材料、容器、生産、配送、広告販促などの費用を賄うのが、事業を理解する基本です。

単価を上げる方法には、価格改定に加え、付加価値の高い商品の販売構成を増やす方法があります。同じ本数でも、売れる商品の組み合わせが、受け取る金額を左右するためです。

一方で、売れ残りや欠品、費用の増加があれば、単価向上の効果は小さくなります。ブランドの評判と、実際に供給して代金を回収する力は、別々に確かめるべき点です。

戦略の狙いと実績を分ける

2026年上期の公式決算資料には、グループ全体について次の実績が記載されています。

  • コア営業利益:為替一定ベースで前年同期比8.5%減。ブランドの販売拡大と減益が同時に起きています。
  • 主な減益要因:日本・東アジアに残ったシステム障害の影響、欧州・アジアパシフィックの需要低迷です。

この実績から、プレミアム化だけで毎期の増益が決まるとは言えません。出荷する力や市場全体の需要も、結果を左右します。

会社は決算質疑で、各地域の固定費削減や調達・供給の効率化を進めると説明しています。価格や品ぞろえを見直す活動と、費用を抑える活動を並行させる方針です。

私は、メーカーの強さは、欲しくなる商品をつくる力と、届け続ける力の掛け合わせにあると考えています。どちらかが崩れれば、消費者が払いたいと思う価格を売上と利益に結び付けにくくなります。

「一本の価値で稼ぐ」が成立する条件は、買いたい人に、必要な商品を、費用を管理して届けられることです。

あなたの仕事に置き換えると

あなたの仕事に置き換えると

アサヒグループは、ブランドで選ぶ理由をつくり、地域の販売網で届け、費用を管理して収益につなげています。

この見方は、商品を売る仕事にも、企画や営業にも応用できます。価格を変える前に、顧客が選ぶ理由と、それを届けられる接点の両方を確かめられるからです。

例えば、法人向け研修なら、教材の量を増やす方法が考えられます。私は、受講後に何ができるかを明確にし、すでに取引する企業の別部署へ届ける方法も検討します。

その際は、評価される内容と、無理なく提供できる内容が重なるかを確かめたいところです。説明が魅力的でも、講師の手配や実施後の支援が追いつかなければ、次の受注にはつながりにくくなります。

自分の仕事に当てはめるために、次の3つの問いに答えてみてください。

  1. 価格以外に選ばれる理由は何ですか。例:納品後の相談に乗れる。
  2. 今ある接点から、誰に届けられますか。例:既存顧客の別部署。
  3. 届け続けるために守る条件は何ですか。例:問い合わせへの対応時間。

三つの答えがつながれば、商品の魅力だけを磨くべきか、届け方を変えるべきかを考えやすくなります。私なら、まず顧客が評価する理由を一つ選び、営業時の説明と提供後の対応が一致するかを確認します。

あなたの商品が、価格以外で選ばれる理由は何でしょうか。

参考

定説と逆説は、成長の方法を比較するための私の分析です。図は主要な商品取引に絞り、卸を含む流通段階をまとめています。