
はま寿司のビジネスモデル-安い一皿を入口に、一食全体で稼ぐ
安い寿司店で、なぜ客単価が伸びる?

手頃な寿司を食べるつもりで入ったのに、気になるネタやデザートも頼んでいた。はま寿司の売上を考える鍵は、看板の一皿と、最後の会計の違いにあります。
はま寿司は、安い一皿を入口に、一食全体で稼いでいます。
定説の発想は、客単価を上げるために全商品の価格を一律に引き上げることです。逆説の発想は、手頃な皿を残しながら、客が追加で選びたくなる食事をそろえることです。ここでは、単価を上げる二つの方法として比較します。
この記事では、はま寿司の仕組みを次の3つの視点で読み解きます。
- 一食の売上:定番・特別なネタ・サイドを組み合わせる。
- 一皿の費用:調達をまとめ、注文から提供までの無駄を減らす。
- 成長の実態:客数・客単価・出店を分けて確かめる。
手頃な入口と客単価の上昇は、両立しています。
国内の公式月次では、直近の上期に客数も客単価も前年を上回りました。大切なのは、安い皿を売るだけでなく、食事全体の売上と提供費用を釣り合わせることです。
下の図は、登場人物と、提供・お金・情報のやり取りを一枚にまとめたものです。上の3段は取引、下の「逆説の構造」は起点となる課題、定説の発想、別の解き方を表します。続く本編では、メニュー、供給と調理、業績の順に読み解きます。
- 人:食べる人・代金を払う人、はま寿司の店舗、調達や物流を担うゼンショーグループ、食材の仕入先です。
- 仕事・サービス・モノ:仕入先の食材はグループの調達・加工・物流を経て店舗へ届き、店は客に料理を提供します。
- お金:客から店舗への飲食代と、グループから仕入先への食材代金です。
- 情報:客の注文が店舗へ、売上・販売の情報が店舗から本部へ伝わります。

110円の皿だけで食事は終わらない

はま寿司のメニューは、来店しやすい価格と、もう一品選ぶ理由を同じ席に用意しています。
公式メニューは、手頃な定番から高価格帯の寿司、麺類やデザートまでそろえる構成です。取得時点の掲載例を、食事の中で果たす役割とともに見ると違いが分かります。
- サーモンは税込110円。気軽に頼める定番です。
- 地中海産大切り本鮪中とろは税込319円。少し奮発したいときの選択肢です。
- 横浜家系ラーメンは税込429円。寿司以外でも食事を組み立てられます。
価格は都市型など一部店舗で異なり、商品は販売期間や在庫にも左右されます。ここで注目したいのは、一律の価格ではなく、一つの注文画面に異なる選択肢が並ぶことです。
安さを知らせ、選ぶ理由を増やす
たとえば、2026年9月に発表されたフェアでは、厳選まぐろ中とろを期間限定の税込110円で販売しました。普段の定番に加えて、今行きたくなる商品を手頃な価格で打ち出した例です。
掲載価格で、同じ八皿を食べる場合を計算してみます。実際の客の注文ではなく、組み合わせが売上へ与える違いを見る例です。
- 110円の皿を八皿なら880円。手頃な皿だけで食事を済ませられます。
- 110円を六皿、319円を二皿なら1,298円。同じ皿数でも選ぶ内容で418円の差が出ます。
客は安い皿だけでも、少し特別な皿を混ぜてもよい。一皿ずつ頼めることで、同じ席に予算の異なる選び方を用意できるのです。
来店のきっかけになる商品と、会計を作る商品の集合は違います。
私はここに、はま寿司の売り方の要点があると考えます。広告で伝える価格は分かりやすくし、席では好みや空腹に合わせて選べる余地を残す。手頃さと、追加で払ってもよいと思える楽しみを両方用意するのです。
ただし、公表資料から商品別の利益率や注文割合までは分かりません。低価格の寿司が赤字で、ラーメンが穴埋めしているといった断定はできないため、一食全体の売上と費用で考えます。
注文式の店は、どう費用を抑える?

選べる料理を増やすほど、売れ残りと作業の負担を抑える運営が必要になります。
はま寿司の公式DX説明は、回転レーンでの陳列販売から、注文商品を高速ストレートレーンで届ける方法への転換を示しています。客が選ぶまで皿を回す方法に比べ、注文という需要の合図を受けて届ける方法です。
注文タッチパネルは、客の希望を店へ伝えると同時に、従業員が注文を聞き取る負担を減らします。商品を運ぶ工程もレーンが担うため、客数の増加を接客作業の増加へ直結させにくくする狙いがあります。
ここで生まれる利点は、人件費の削減だけではありません。売れるか分からない料理を先に並べ続ける必要を減らせれば、食材を使うタイミングも変わります。公式がレーンの転換を水産資源の無駄の抑制と結び付ける理由です。
全部を工場で済ませない理由
店の外では、ゼンショーのMMDが食材の調達、製造・加工、物流、販売を一貫して管理します。公式説明によると、食材の仕様を産地で設計し、販売予測に合わせて製造する方式です。仕入れと在庫、配送を別々に考えず、店へ届くまでを調整できます。
一方、はま寿司が公表する調理方法は、サーモンの店内切りや、店内での炙り・蒸しです。炙り時間もネタごとに秒単位で定めており、店内の手仕事にも基準を置いています。外でまとめる工程と、店で仕上げる工程を分けた運営です。
共通化するのは供給や作業の一部で、仕上げまで一律に省くわけではありません。
私が重要だと思うのは、この分担です。客が選びたくなる料理を用意しながら、調達・在庫・注文・運搬の負担を抑える。品ぞろえと低価格を支えるには、店頭の工夫と供給側の管理が組み合わさる必要があります。
客の飲食代から賄う費用には、食材、人件費、賃料に加えて、配送や設備も含まれます。省力化には投資と保守が伴うため、注文量に見合う運用が利益を残す条件です。
客数・客単価・出店を分けて読む

足元の国内売上は、客数の増加以上に客単価の上昇が支えています。
ゼンショーの国内はま寿司月次では、2026年4〜9月の上期実績は次の通りです。既存店の前年比は一日平均で比較し、一時休業店を除く会社の開示基準によります。
- 既存店売上高は前年同期比8.4%増。同じ店の売上が伸びています。
- 既存店客数は1.8%増。来店人数の伸びは比較的小幅です。
- 既存店客単価は6.6%増。一人あたりの支払いが売上増を支えています。
- 全店売上高は13.4%増。既存店の改善に加え、新店を含む売上も拡大しました。
この結果は、「安い店だから、大勢を集めただけ」という説明では捉えきれません。手頃な皿を扱いながら、一人あたりの売上も増やしているからです。
ただし、客単価には価格改定、選ぶ商品の変化、注文量などが影響します。月次ではその内訳を分解していないため、特定のメニューや施策の効果とは断定できません。
増収でも利益率は別に動く
海外を含むグローバルはま寿司の2026年3月期は、売上高28.9%増に対して営業利益25.4%増でした。売上と利益はともに伸びましたが、利益の伸び率は売上を下回っています。
その後の2026年4〜6月は、違う動きです。
- 売上高は935億1,500万円、前年同期比32.2%増。国内外を含む事業の規模です。
- 営業利益は88億800万円、70.4%増。売上以上の伸びになりました。
- 営業利益率は9.4%、前年同期は7.3%。会社の決算説明資料に記載された比率です。
値段の安さより、売上の増え方と費用の増え方の差を見る必要があります。
国内月次と海外を含む業績は、期間も範囲も異なる資料です。同四半期には国内外で52店を出店しており、成長には店を増やす動きも含まれます。売上を客数、客単価、出店に分け、費用との釣り合いを確かめることが必要です。この順で見ることで、「安くても儲かる」を具体的に考えられます。
あなたの仕事に置き換えると

はま寿司の事例が教えるのは、入口の価格と、一回の取引全体を分けて設計することです。
最初に目を引く商品だけを安くしても、選んだ後の満足や提供費用が釣り合わなければ続きません。はま寿司では、手頃な皿の先にほかの料理を選べる席があり、それを提供する注文・調理・供給の工程があります。
自分の仕事に当てはめるために、次の3つの問いに答えてみてください。
- 最初に買う理由になる商品は何ですか。例は「少量のお試しセット」です。
- 使った後に追加したくなるものは何ですか。例は「用途を広げる付属品」です。
- 売上が増えたとき、同じ勢いで増える費用は何ですか。例は「個別配送の費用」です。
たとえば、お試し商品が好評でも、追加の注文がなく配送費だけがかさめば、売るほど負担が重くなる場合があります。逆に、追加の商品を同梱できるなら、客の便利さと配送負担を一緒に考えられるでしょう。
私なら、入口商品の販売数だけで成功を判断せず、一回の購入総額と、その注文を届ける費用を確かめます。安く売る工夫を、利益まで残せる設計へ進めるためです。
あなたの商品は、入口の先で何を選んでもらう設計になっていますか。
参考
取得日:2026年10月25日。本文の定説・逆説は、単価を上げる方法の分析上の比較です。国内月次と海外を含むセグメント業績を分け、商品別の利益率や施策別の増収寄与は推定していません。
- ゼンショー「はま寿司 月次推移」:2026年4〜9月、10月5日更新。
- ゼンショー「2026年3月期 決算短信」:本文2ページ、5月12日公表。
- ゼンショー「2027年3月期 第1四半期決算短信」:本文2ページ、8月7日公表。
- ゼンショー「2027年3月期 第1四半期決算説明資料」:7ページ、8月7日公表。
- はま寿司「メニュー紹介」:取得時点の掲載例。店舗別価格差あり。
- はま寿司「中とろ100円と大漁!旨ねた祭り」:9月7日発表の実施事例。
- はま寿司「DX」
- はま寿司「こだわり」
- ゼンショー「ビジネスモデル」
