POP MARTのビジネスモデル-選べない箱が、次も欲しい理由になる

POP MARTのビジネスモデル-選べない箱が、次も欲しい理由になる

ホビー・キャラクター

POP MARTは何を売っている?

箱を開ける成人と集めた玩具。説明用イラスト。

好きなキャラクターの箱を開けて、思わず誰かに見せたくなる。
POP MARTは、好きなIPの商品に開封と収集の楽しみを重ね、次の購入理由を育てています。

定説の発想は、好きなキャラクターを楽しむために、欲しいデザインを選んで買うことです。
逆説の発想は、中身を伏せた箱によって、何が出るかという驚きまで楽しむことです。
この定説と逆説は、購入方法を比べる視点として私が設定しました。

この記事では、POP MARTの仕組みを次の3つの視点で読み解きます。

  1. 開封と収集:好きなキャラクターに、出会う楽しみを足す。
  2. 商品と収益:作家の創作を商品に育て、販売代金を得る。
  3. 販売と継続:買える場所と新しい商品で、次の接点を作る。

「選べない箱が、次も欲しい理由になる」。
この読みどころを、登場人物と、提供・お金・情報のやり取りから追います。

記事全体をまとめた図では、上の3段に登場人物とやり取りを置きました。
下の「逆説の構造」は、起点が欲求、定説が一つの解き方、逆説が別の解き方を示します。
次の本編では、先ほどの3つの視点から図の内容を詳しく見ていきます。

  • 人:商品を楽しみ代金を払う購入者、企画・販売を行うPOP MART、契約する作家・権利者。
  • 仕事・サービス・モノ:POP MARTから購入者への商品、作家・権利者から同社へのIPの利用許諾。
  • お金:購入者からPOP MARTへの商品代金、同社から作家・権利者への契約に応じた利用料。
  • 情報:購入者からPOP MARTへの注文情報。
購入者、POP MART、作家・権利者の商品・代金・注文・許諾・利用料と逆説の構造
ビジネスモデルの仕組みを整理した図解

「選べない」は、なぜ楽しみになる?

好きなIP、開封の期待、集める楽しみを順に示す考察図

ブラインドボックスは、商品を手に入れる時間に、開けるまでの期待を加えます。
公式FAQによると、購入するシリーズは分かっていても、具体的な中身は開封まで伏せられています。
通常のデザインに加え、希少なシークレットを含むシリーズもあるそうです。

自分で選んだ一体を飾る楽しみと、箱を開けて一体に出会う楽しみ。
同じキャラクターでも、買うときに期待することが変わります。
中身を確かめる瞬間までが、商品の楽しみ方に含まれるのです。

私は、ここに「もう一つ」のきっかけがあると考えています。
出会ったデザインを気に入れば、別の表情や仲間も並べたくなるでしょう。
収集する人にとっては、一体を買い終えることが、次の候補を知る入口にもなります。

驚きの前に、好きがある

最初に必要なのは、箱の中を見たいと思えるキャラクターです。
知らない商品が無作為に出てくるだけでは、購入前の期待を作りにくいでしょう。
好きな世界観の中で、どのデザインに出会えるかを楽しめることが大切です。

箱を開けた後にも、飾る、持ち歩く、並べるといった楽しみは続きます。
私は、驚きだけに頼るより、手元に置いて満足できる商品と組み合わせることが重要だと思っています。
買う前の期待と、買った後の愛着の両方を設計するという見方です。

一方、狙った一体だけを確実に欲しい人には、選べる売り方の方が合います。
ランダム販売を使うなら、誰がどんな楽しみを求めるかを先に見極める必要があります。
購入回数を増やす工夫と、購入者の満足を保つ工夫を、一緒に考えたいところです。

LABUBUの人気は、誰の売上になる?

2024年と2025年のぬいぐるみ類売上構成比21.7%・50.4%

POP MARTの収益の中心は、IPを活用した商品を企画し、販売することです。
IPは、キャラクターなどの知的財産を指します。
作家の創作を商品として届けるには、権利を使う契約と、商品を作り売る仕事が必要です。

公式デザイナー紹介では、LABUBUを生んだKasing Lungとの独占ライセンス契約が紹介されています。
契約が結ばれたのは2019年です。
POP MARTは、作家の世界観を消費者が手に取れる商品へ展開しています。

私が注目するのは、創作と販売が別の得意分野であることです。
作家の表現を生かしながら、商品形態や売り場を整えれば、作品と出会う人を増やせます。
同社は、創作を消費者に届けるための商品企画や販売を引き受ける担い手です。

商品代金から費用を賄う

2025年通期決算から、事業の大きさと商品の変化を確認できます。

  • 売上高は約371.2億元:商品を中心に、大きな販売規模へ育っています。
  • ぬいぐるみ類の売上構成比は21.7%から50.4%へ:2024年から2025年に大きな柱へ育ちました。
  • 売上総利益率は72.1%:商品原価を差し引いた後、販売や運営に使う余地があります。

消費者から受け取る商品代金が売上となり、製造・仕入れや権利利用などの費用を賄います。
最終的な利益は、さらに店舗、人員、販売促進などの費用を差し引いた残りです。
売上総利益率は、このうち商品原価を引いた段階の割合です。

商品の展開には、作家・権利者へ支払う利用料もかかります。
個別契約の料率は、今回確認した公開資料では確認できませんでした。
図では、商品の販売代金と、IPを使うために外部へ支払うお金を分けています。

同じキャラクターでも、素材や大きさ、使い方が変われば、購入のきっかけは変わるでしょう。
私は、人気のある絵柄を繰り返すだけでなく、生活の中で楽しめる商品へ展開する力が重要だと考えています。
ファンが好きなものを、違う形でも手に取れるようにする仕事です。

次の購入を支える接点はどこ?

2026年上半期のTHE MONSTERS44.5億元とTWINKLE TWINKLE26.5億元

好きになった後に買える場所と、新しく欲しくなる商品が、継続的な売上を支えます。
2025年の決算資料には、店舗や自動販売機型のRoboshop、公式アプリ・サイトでの販売が記載されています。
外部のECも含め、複数の窓口から商品を届ける販売体制です。

店舗なら実物や売り場に触れられ、オンラインなら離れた場所からも注文できます。
接点が違えば、知るきっかけや買いやすいタイミングも変わるはずです。
私は、商品を知ってから買うまでの距離を縮められることが、この販売網の強みだと思っています。

商品が更新されれば、すでに好きな人にとっても新しい購入候補になるでしょう。
新しいファンを集める仕事と、既存のファンに次の商品を届ける仕事が、同時に必要になります。
一度のヒットを長く売上につなぐには、売り場を増やすだけでなく、商品も磨き続けることになるでしょう。

LABUBUの次も育てられるか

2026年上半期の会社発表では、会社全体の成長とIPごとの違いが読み取れます。

  • 売上高は約171.7億元、前年同期比23.8%増:前年の同じ半年と比べて拡大しています。
  • THE MONSTERSは約44.5億元、構成比26%:LABUBUを含むIPが大きな柱です。
  • TWINKLE TWINKLEは約26.5億元:別のIPもまとまった売上を生んでいます。

ここで見るべきなのは、人気IPを複数育てる仕事です。
ファンの好みが分かれたり、一つのキャラクターの勢いが落ち着いたりしても、別の商品を届けられます。
ただし、複数のIPがあるだけで、次のヒットが約束されるわけではありません。

私は、キャラクターへの愛着と、商品を更新する力を一緒に見たいと考えています。
新作を出すたびに、買う人がどこを気に入り、何に満足したかを確かめることが重要でしょう。
人気の数字と、その数字を支える商品への反応を、セットで捉えるということです。

あなたの仕事に置き換えると

私ならこう考える:コーヒー店で次の楽しみを提案する応用例

POP MARTは、好きなものを買う行為に、出会いと収集の楽しみを重ねています。
私は、この考え方を「次の購入理由を、商品の楽しみ方から探す」と捉えています。
自分の仕事に当てはめるために、次の3つの問いに答えてみてください。

  1. お客様が、すでに好きで選んでいるものは何ですか。

回答例:店員が選ぶ、いつもおいしいコーヒー。

  1. 次も買いたくなる、どんな変化を届けられますか。

回答例:季節ごとに変わる豆の飲み比べ。

  1. 欲しいと思ったとき、どこで買えると便利ですか。

回答例:いつもの店から、そのまま注文できる窓口。

この例なら、すべての商品を無作為にする必要はありません。
香りや味の好みを聞いたうえで、新しい候補を提案する方法もあります。
楽しみの増やし方は、お客様が安心して選べる範囲から考えられます。

買って終わりにせず、次を楽しみにできる一つの変化は何でしょうか。

参考

図は主要な直販と作家・権利者との契約を中心に簡略化しています。
開封の楽しみと次の購入の関係、仕事への応用は、公開資料を踏まえた私の考察です。