
サンリオのビジネスモデル-好きを育て、他社の売り場で稼ぐ
サンリオはどこで稼いでいる?

マグカップ、服、スマートフォンの画面。好きなキャラクターと出会う場所は、専門店の外にもあります。その商品の代金は、誰の売上になるのでしょうか。
サンリオは好きを育て、他社の売り場で稼ぐ会社です。
定説の発想は、好きなキャラクターを日常で楽しんでもらうため、自社の店と商品を増やすことです。逆説の発想は、他社の商品や売り場にもキャラクターを広げることです。
この記事では、サンリオの仕組みを次の3つの視点で読み解きます。
- 使用許諾:他社の商品からロイヤリティを得る
- ファンとの接点:商品と体験で愛着を育てる
- 人気の持続:複数のキャラクターを育て続ける
下の図は、この記事の内容を1枚にまとめたものです。上の3段は「登場人物と、提供・お金・情報のやり取り」、下は「逆説の構造」を表します。起点は欲求、定説はよくある発想、逆説は別の解き方です。続く本編では、3つの視点からこの図を順に読み解きます。
- 人:ファンが利用者・購入者となり、サンリオグループとライセンス先企業が商品や体験を届けます。
- 仕事・サービス・モノ:商品は売り手から購入者へ届きます。サンリオはパーク体験を提供し、他社へキャラクターの使用を許諾します。
- お金:購入者は売り手へ商品代金を、来場者はパークへ入場料などを支払います。他社はサンリオへロイヤリティを支払います。
- 情報:ECで購入する人は、ショップへ注文を伝えます。図では水色の四角で表しています。

他社の商品がサンリオの収入になる

ライセンス先が売る商品の代金と、サンリオが受け取る使用料は別の収入です。
公式の事業案内では、サンリオは商品販売とライセンスの両方を展開しています。ライセンスとは、他社がキャラクターを商品や広告などに使えるようにする契約です。キャラクターやデザインなどの知的財産は、事業資料ではIPと呼ばれます。
商品化の場面で考えてみましょう。メーカーなどが使用許諾を受け、自社の商品にキャラクターを取り入れます。購入者の商品代金は売り手に入り、契約に基づくロイヤリティがサンリオに入る順序です。
統合報告書2026は、ライセンス商品の販売総額を推計する際、使用料収入を料率で割っています。料率は契約によって異なるとも説明しています。したがって、他社商品の販売総額を、そのままサンリオの売上と読むことはできません。
他社の販路と商品づくりが、キャラクターの届く範囲を広げます。
衣料品を作る企業と、デジタルサービスを運営する企業では、得意な仕事が違います。サンリオは各社と組むことで、商品開発や販売のすべてを自社で担う範囲を超えて接点を増やせます。公式サイトには、ゲームとのコラボや検索ツールの着せかえなども紹介されています。
相手が参加する理由は何か
キャラクターが好きな人にとって、普段使う商品に推しが加われば、選ぶ理由が増えると私は考えています。提携企業には、自社商品の機能に加え、ファンの関心を得る機会が生まれます。サンリオには、使用料と新しい接点を得る機会があります。
ただし、名前や絵を載せるだけで売れるなら、企業は商品そのものを磨く必要がなくなります。実際には、使いやすさ、価格、売り場との相性が購入判断を左右します。ファンが納得する商品を提携先と作れることが、この方法の成立条件です。
私は、この役割分担に注目しています。自社が持つデザインや企画と、相手が持つ製造・販売の強みを組み合わせれば、届けられる相手が変わるからです。
自社の店とパークが好きを育てる

自社の商品とテーマパークは、直接収入を得ながらファンとの関係を深める接点です。
統合報告書2026は、店舗でキャラクターに出会い、商品を選ぶ楽しさを高めてきたと説明しています。自社物販は、商品代金を受け取る事業であると同時に、キャラクターを知ってもらう場でもあります。ライセンス先に展開を任せる部分と、自社で作る接点が併存しています。
テーマパークでは、キャラクターを持ち帰る商品に加え、その場で過ごす時間が提供されます。公式の事業案内が挙げるのは、音楽やダンス、交流や感動です。購入と来場では、ファンがキャラクターに触れる方法が変わります。
商品を買う場と、キャラクターに会う場を持っていることが強みです。
統合報告書は、露出でファンの入り口を作り、深い体験で愛着を高め、購買や利用につなげる考え方を示しています。私は、自社の接点で育てた愛着が、他社のキャラクター商品を選ぶ理由にもなると考えています。店やパークの売上だけを見ると、このつながりを捉えにくくなります。
買わない時間にも接点がある
サンリオが用いる「サンリオ時間」は、商品やサービスに触れる時間を捉える独自の指標です。日常の寄り添いと、コンテンツなどに夢中になる体験を区別して測っています。購入の瞬間だけでなく、普段どれだけ関わっているかにも目を向けています。
例えば、好きなマグを使う時間や、動画を楽しむ時間が、次の購入までの関係をつなぐと考えられます。接点を増やす狙いは、毎回すぐに買ってもらうことだけには収まりません。好きな気持ちが続く場を用意することにも意味があります。
自社で深い体験を作り、他社と日常の売り場を広げる。この組み合わせが、店を増やす方法とライセンスを広げる方法を結び付けています。自社の接点と提携先の接点を、それぞれの得意な仕事で設計できるからです。
キティだけに頼らず人気を育てる

複数のキャラクターと接点を育て、人気の波を受け止めることが継続成長の課題です。
統合報告書2026のトップメッセージでは、ハローキティへの依存から、複数キャラクターが売上を支える方向へ進んだと説明されています。同時に、業績の変動を抑える取り組みは道半ばとも述べています。キャラクターを増やすことと、安定した収益を作ることには距離があります。
2027年3月期第1四半期の決算説明資料では、幅広いキャラクターの浸透と、採用される商品カテゴリーの拡張が報告されています。同期間の連結実績は、2026年4月から6月を対象としています。
- 売上高520.35億円:前年同期比20.7%増で、事業全体の収入が広がっています。
- 営業利益224.35億円:前年同期比11.1%増で、利益も増えています。
この数値はグループ全体の実績です。商品販売、ライセンス、テーマパークなどを含むため、ライセンス単独の採算を表す数字としては使えません。売上の伸びと利益の伸びを分けて見ることで、接点拡大に伴う費用も意識できます。
キャラクターの人気を育てる仕事は、使用許諾の後も続きます。
ライセンス先が増えても、ファンの関心が薄れれば商品を選ぶ理由は弱くなります。だから、発信、デザイン、店舗での出会い、体験を更新し続ける必要があります。使用料を受け取る段階だけで、サンリオの仕事を捉えることはできません。
広げるほど何を守るか
提携先の商品がファンの期待と合わなければ、接点が増えても好意は育ちにくいでしょう。統合報告書でも、知的財産の保護や侵害品対策が課題として挙げられています。広げる仕事と、キャラクターへの信頼を守る仕事がセットになります。
私が事業へ応用するなら、提携件数だけを成果の指標にしません。新しく届いた相手が、商品を選ぶ理由を持てたかまで確かめます。サンリオから学べるのは、他社に任せる範囲を広げながら、自社が育てるべきものを持ち続ける発想です。
あなたの仕事に置き換えると

サンリオは、自社で育てた好きを、他社の商品や売り場にも広げて収益につなげています。
自分の仕事に当てはめるために、次の3つの問いに答えてみてください。
- 相手が繰り返し選ぶ理由は何ですか。回答例は「初心者にも分かる説明」です。
- その理由を届けるのが得意な相手は誰ですか。回答例は「顧客が普段使う販売店」です。
- 自社で育て続けるものは何ですか。回答例は「説明の分かりやすさ」です。
例えば、説明が得意な会社なら、販売店が使える教材を提供する方法があります。販売店は普段の接客に組み込み、提供側は教材を更新します。これは私が考える応用例で、利用条件や対価は双方の仕事に合わせて設計します。
すべてを自社で届けようとすると、得意な内容づくり以外の仕事も増えます。相手の強みを生かせれば、届け方を増やしながら、自社は選ばれる理由を磨けます。ただし、相手の仕事と顧客の欲求が合うかを先に確かめる必要があります。
あなたが育てた「選ばれる理由」を、誰の売り場ならもっと届けられますか?
参考
- 株式会社サンリオ 統合報告書2026(2026年10月7日公開、掲載ページ4〜5、47、49ほか。取得日:2026年10月13日)
- 2027年3月期 第1四半期決算短信(2026年8月10日公開、冒頭の連結実績。取得日:2026年10月13日)
- 2027年3月期 第1四半期決算説明資料(2026年8月10日公開、掲載ページ2。取得日:2026年10月13日)
- 事業案内(取得日:2026年10月13日)
定説と逆説は、同じ欲求に対する届け方を比べた私の分析です。図では主要な商品販売・パーク・使用許諾に絞り、個別契約の料率や流通の中間企業は省略しています。
