
ドトールのビジネスモデル-カフェの裏側で、卸売が売上をつくる
ドトールは一杯の代金だけで稼ぐ?

駅前でコーヒーを買い、仕事の前にひと息つく。
ドトールで払う代金の向こうには、店の接客だけでなく、豆を焙煎して届ける商売があります。
ドトールは、カフェの裏側で、卸売が売上をつくる会社でもあります。
定説の発想は、コーヒー事業を広げるために、自社の店と席を増やすことです。
逆説の発想は、加盟店や小売店の売り場を使い、そこへ商品を届けることです。
この対比では、売り場を誰が持つかに注目しています。
業界の常識を示したものではなく、私の分析です。
ドトールは直営店も運営しながら、他の事業者に売ってもらう方法を組み合わせています。
この記事では、ドトールの仕組みを次の3つの視点で読み解きます。
- 1. 店頭の一杯:日常の飲み物と食事で来店理由をつくる。
- 2. 本部の収入:加盟店へ豆と食材、運営の方法を届ける。
- 3. 成長の中身:店外にも売り場を持ち、卸売を伸ばす。
以下の図は、この記事の内容を一枚にまとめ、登場人物と、提供・お金・情報のやり取りを示しています。
上の3段が取引関係、下の「逆説の構造」が、起点=困りごと、定説=よくある発想、逆説=別の解き方です。
サービスは矢印に添えた言葉で読み、続く本編で先ほどの3つの視点を順に確かめます。
- 人: 飲むお客様、直営店と加盟店、本部、コンビニ・量販店などが登場人物です。
- 仕事・サービス・モノ: 店は飲食物を、本部は加盟店へ豆・食材と運営支援を、小売店側へコーヒー製品を届けます。
- お金: お客様は買った店へ払い、加盟店は本部へ商品代金とロイヤリティを払います。小売店側から本部へ渡るのは、卸売代金です。
- 情報: 店舗から本部へ届く発注が、焙煎・供給につながります。

300円の一杯と、食事の組み合わせ

店頭では、繰り返し買えるコーヒーとフードを組み合わせ、日常の需要を受け止めています。
公式メニューで確認したブレンドコーヒーの価格は、次のとおりです。
- Sサイズは税込300円。飲み物一杯から利用できます。
- Mサイズは税込350円。飲む量に合わせて選べます。
- Lサイズは税込400円。サイズの違いでも一回の購入額が変わります。
価格は取得日時点の公式表示です。
店舗によって異なる場合があります。
食事にはミラノサンドやジャーマンドックがあり、モーニング・セットも選べます。
飲み物だけの休憩と、パンを添えた食事。
同じ店で異なる用事を済ませられるため、一杯の安さだけで店頭売上を説明するのは不十分です。
購入点数や組み合わせも、一回の会計に影響します。
毎日使える店のつくり方
公式の周年ページによると、原宿の一号店は立ち飲みの店でした。
当時の価格は、毎日飲んでも負担にならないように設定したと説明されています。
今の店舗について、公式FC案内は立地や客層に合わせた空間配置を紹介しています。
短い休憩をする人も、食事をする人も受け入れるため、店づくりを調整しているのです。
私は、日常の選択肢に入るには、値段と使いやすさを一緒に考える必要があると思っています。
手頃でも、注文しづらかったり、食べたいものがなかったりすれば、来店は続きません。
一方、商品を増やせば、仕入れや調理、廃棄を管理する仕事も増えます。
追加注文が売上につながるかは、提供の手間を含めて考える必要があります。
「買いやすい一杯」と「一緒に買う理由」を、同じ店で両立させる。
それが店頭で見るべきポイントです。
加盟店で売れると、本部に何が入る?

加盟店への商品供給と運営支援が、本部にとって継続的な取引になります。
公式FC案内では、本部が提供するものに、商品、メニュー開発、従業員教育などを挙げています。
加盟店側の支払いは、商品代金やロイヤリティなどです。
開業時の支払いと、営業を続ける間の取引を分けて見ることが大切です。
例えば加盟店でお客様がコーヒーを買うと、その飲食代金はまず加盟店の売上になります。
本部は、加盟店へ納めた豆や食材の代金などを受け取ります。
加盟店のレジの売上と、本部が受け取る売上は別です。
両方を足して本部の売上と数えると、事業を実態より大きく見せてしまいます。
焙煎メーカーが店を支える
ドトールは、豆の買い付けから焙煎・販売までを自社で手掛けています。
FC向けの公式説明によると、店舗の発注を受けてから生産する受注生産を採用しています。
この体制では、加盟店が一店ずつ焙煎設備や豆の開発機能を持つ必要がありません。
本部が商品と供給を担い、オーナーは店の経営や接客に力を使えます。
本部にとっても、加盟店で商品が売れることが、次の発注につながります。
ただし、豆を届けるだけで店が続くわけではありません。
公式案内には、開業前の研修に加え、開業後に担当者が収益改善などを支援することも書かれています。
商品供給と店の運営支援を一組で考えている点が、FC本部としての特徴です。
加盟店には、仕入れ以外にも人件費や家賃などの負担があります。
加盟店が利益を残して営業を続けられることが、本部の継続的な取引を支える条件です。
自分の仕事へ応用するなら、販売先に商品を渡した後の使われ方まで考えたいところです。
取引先が売りやすく、扱いやすい状態をつくることも、次の注文につながる仕事になります。
卸売が小売を上回る決算の中身

直営店の外にも売り場を持つことが、ドトールの売上を広げています。
ドトールコーヒーグループの中間決算を、外部顧客への売上で分けると次のようになります。
対象期間は2026年3〜8月です。
- 小売は224億99百万円。直営店舗などでの販売を含みます。
- 卸売は294億64百万円。加盟店への供給と一般卸売を含み、小売を上回ります。
- その他は12億55百万円。売上の区分は、この三つに分かれます。
卸売の中には、コンビニ向けのチルド飲料や、量販店で扱う家庭用商品があります。
店に座って飲む人以外にも、商品を届けているのです。
前年同期と比べると、卸売の増加額は小売より大きくなっています。
決算短信は、量販店などでの取引先や商品点数の拡大も説明しています。
販売先と品ぞろえの両方を広げて、店舗外での注文を増やす動きです。
席を増やす以外の成長
公式の事業案内は、チルド飲料、ドリップコーヒー、業務用コーヒーなどを紹介しています。
焙煎や商品開発の力は、外部の売り場でも使えます。
飲食店の席数だけでは、売れる量の上限を説明できません。
加盟店では店を経営するオーナーが、小売店では商品を販売する事業者が、消費者との接点を担います。
費用を誰が持つかが、直営店中心の事業との違いです。
本部側に残る負担は、製造、在庫、配送、品質管理などです。
私は、この商売を「店の費用がなくなる方法」ではなく、製造と供給を軸に販売先を広げる方法だと考えています。
卸売の売上が大きいことと、卸売の利益が大きいことは分けて考えます。
今回の収益分解だけでは、卸売の中の販売先別売上や利益率までは確定できません。
取引が増えても、原材料や物流の費用を回収できなければ、利益は増えにくくなります。
なお、ここで示したのはエクセルシオール カフェなども含むグループの数字です。
ドトールコーヒーショップ一業態だけの売上とは、範囲が異なります。
あなたの仕事に置き換えると

ドトールは、自分の店で売る力と、他の売り場へ商品を届ける力を組み合わせています。
自分の仕事に当てはめるために、次の3つの問いに答えてみてください。
1. 自分以外で、お客様との接点を持つ人は誰ですか。
例は「すでに地域で営業している販売店」です。
2. その人に繰り返し届けられるものは何ですか。
例は「店で継続して使う専用の消耗品」です。
3. 取引先が売り続けるために、何を手伝えますか。
例は「新人でも説明できる商品研修」です。
私は、最初から販売先を増やすより、相手が売り続けられる条件を確かめることが先だと思っています。
注文が増えるほど供給が遅れたり、取引先の採算が悪くなったりすれば、長く続きません。
売り場を任せる相手がいても、売る理由と届ける力は必要です。
商品そのものと、それを扱う人への支援を一緒に考えると、次の取引をつくる余地が生まれます。
あなたの商品を、繰り返し売りたくなる相手は誰でしょうか。
参考
- ドトール・日レスホールディングス「2027年2月期 第2四半期(中間期)決算短信」(2026年10月13日公表、本文2〜3ページの経営成績、10〜11ページの収益分解・事業概要。取得日:2026年10月26日)
- ドトールコーヒー「事業構造」(取得日:2026年10月26日)
- ドトールコーヒー「事業案内」(取得日:2026年10月26日)
- ドトールコーヒー「フランチャイズオーナー募集」(取得日:2026年10月26日)
- ドトールコーヒー「出店までのプロセス」(取得日:2026年10月26日)
- ドトールコーヒー「選ばれる理由」(取得日:2026年10月26日)
- ドトールコーヒーショップ「ブレンドコーヒー」・メニュー(取得日:2026年10月26日)
- ドトールコーヒーショップ「誕生40年」(歴史の確認に使用。取得日:2026年10月26日)
図は主要な販売先との取引を示し、流通の仲介者、生豆の調達、直営店への社内供給を省略しています。
定説・逆説や仕事への応用は、上記資料をもとにした私の分析です。
