ソフトバンクグループのビジネスモデル。すべてを自社で開発せず企業をつなぎAIの未来を育てるという主題のアイキャッチ

ソフトバンクグループのビジネスモデル-すべてを自社で開発しない、AI時代の企業のつなぎ方

金融・投資

新しい技術が登場するたびに、「これも自社でできるようにしなければ」と感じたことはありませんか。AIを使ったサービスでも、必要なのはアプリの機能だけではありません。

必要な技術や設備まで自分たちで揃えようとすると、完成する前に市場が変わってしまうこともあります。ソフトバンクグループのビジネスモデルは、この悩みを考えるヒントになります。

ソフトバンクグループから学べるのは、すべてを自社で開発するよりも、異なる企業の強みをつなぎ、その成長に参加するという視点です。

  1. Armの収益と、投資持株会社の成果を分けて読む。
  2. AIが価値を届けるまでに必要な、企業同士のつながりを見る。
  3. 企業の「群」を育てる機会と、挑戦を続ける資金の余力を考える。

ソフトバンクグループは、何を売る会社なのか

企業群の関係と成長を机上の模型で考える企画担当者

「ソフトバンク」と聞いて、スマートフォンの通信料金を思い浮かべる人は多いでしょう。ただ、今回取り上げるのは、国内の通信サービスを提供するソフトバンク株式会社ではなく、投資を軸に事業を展開するソフトバンクグループ株式会社です。

グループを理解するとき、「どの商品を、誰に、いくらで売っているか」だけでは全体像を捉えにくくなります。たとえば、次のように異なる役割があります。

  • 半導体技術を提供するArm。
  • AI分野の投資先。
  • 投資ファンド。

ソフトバンクグループは、自らを戦略的投資持株会社と位置付けています。有望な企業に資金を投じ、その企業の成長を、保有する株式の価値向上につなげていく。まずは、この構造を出発点にすると分かりやすくなります。

もちろん、出資しただけで企業が必ず成長するわけではありません。投資する領域と、それを支える資金の用意が問われます。「何を売るか」に加えて、「誰の成長に参加するか」を考える会社として見てみましょう。

冒頭の「すべてを自社で開発しない」は、開発そのものをやめるという意味ではありません。企業ごとの強みを生かし、必要な役割を組み合わせるという、記事と図解を読むための軸です。

Armの収益と、持株会社の成果を分けて読む

半導体技術の提供と製品出荷を通じて生まれる収益のイメージ

ここで、グループの重要な企業であるArmを見てみます。Armの主要な収益には、技術を使う権利を提供するライセンス料と、その技術を使った半導体の出荷に応じて受け取るロイヤルティーがあります。

たとえば、半導体企業がArmの設計技術を採用して製品を開発します。契約に基づく技術の利用と、その後の製品出荷という、異なる段階が収益につながります。採用から出荷まで時間がかかる一方、製品が長く使われれば、収益も長い期間にわたって生まれ得る仕組みです。

このモデルの面白さは、技術を一度売って関係が終わるとは限らないことです。顧客の製品が市場で使われ続けることと、Armの収益に接点がある。自社の売上を伸ばすために、顧客の事業が伸びる条件を整えるという視点が見えてきます。

なお、Armは2026年3月にAIデータセンター向けのArm AGI CPUを発表し、完成したチップを開発・販売する領域にも踏み出しています。「設計技術の提供だけをする会社」と固定して理解しないことも大切です。

評価益と現金は別もの

一方、Armの売上と、ソフトバンクグループの投資成果は同じものではありません。子会社の業績は連結決算に関わりますが、投資持株会社としては、保有株式の価値がどう変わったかも重要になります。

同社が重視する指標の一つがNAVです。これは、保有株式の価値から調整後の純有利子負債を差し引いた、投資持株会社としての価値を見る指標です。

ただし、株式の評価額が上がっても、その増加分がそのまま現金として入るわけではありません。図解の「評価益と現金収入は別」という注記も、この区別を示しています。

ニュースを読むときは、次の三つを分けて考えてみてください。

  • 事業で生まれた売上。
  • 保有株式の価値や、その変化。
  • 投資や返済に使える手元の資金。

どの話をしているのかを確かめるだけでも、「好調」という言葉が何を指しているかを読み取りやすくなります。

AIの成長を、一つの企業だけに任せない

AIモデル、半導体、計算設備、ロボットが支え合うイメージ

ソフトバンクグループのAI戦略を見ると、投資対象が「便利なAIアプリ」だけに収まっていないことに気付きます。公式資料では、次の領域を重点領域として示しています。

  • AIモデル。
  • 半導体。
  • データセンターと電力などのインフラ。
  • 現実世界で働くロボットなどのフィジカルAI。

なぜ、これほど広い領域を見ているのでしょうか。ここからは筆者の考察として、各領域の役割をつないで考えてみます。

高性能なAIモデルがあっても、動かすための計算資源が足りなければ、使いたい企業に十分なサービスを届けられません。半導体があっても、データセンターや電力が必要です。さらに、AIを現場の作業に使うには、機械や業務との接続も欠かせません。

つまり、AIの利用拡大は、一つの技術だけでは完結しにくいのです。OpenAIなどへの投資を、先ほどの役割の違いから見てみましょう。個々の取り組みと、AIの価値が届くまでの流れを結び付けると、投資先の名前を並べるだけでは見えない戦略が浮かびます。

ただし、投資先が増えれば自動的に連携が進む、という意味ではありません。次のような条件を確かめる必要があります。

  • 技術が合うか。
  • 実際に需要があるか。
  • 設備や資金の負担に耐えられるか。

構想を事業に変えるには、個々の企業の実行と、企業同士の接続が必要です。

私たちの仕事に置き換えると

ここも筆者の考察です。たとえば、予約システムの機能を増やしても、店舗スタッフが使いこなせなければ、顧客の待ち時間は減らないかもしれません。必要なのは、機能の追加だけでなく、導入支援や現場の運用とのつながりです。

強い商品をつくることと、その商品が価値を発揮する環境をつくることは、別の仕事です。価格競争から抜け出すヒントは、商品単体の比較表ではなく、「顧客が成果を得るまでに、何が足りていないか」に隠れているかもしれません。

企業の「群」を育てるために、何を揃えるか

異なる強みを持つ企業と資金の余力を共に考えるチーム

ソフトバンクグループは、企業の自律性を尊重しながら、共通のビジョンでつながる「群戦略」を掲げています。すべての企業を一つの組織に統合し、同じ方法で動かす発想とは異なります。

それぞれの企業に、得意な分野や意思決定の仕方があります。その違いを残したまま、資金や連携機会を通じて成長を支える。変化の速い市場では、多様な企業の強みを取り込めることが、戦略上の選択肢を広げます。

挑戦を続ける資金の余力を守る

一方で、投資には損失や資金負担も伴います。AIへの期待が大きくても、投資先の価値が下がる可能性はありますし、借り入れには返済が必要です。そのため同社は、保有株式価値に対する負債の割合を示すLTVや、手元資金も管理しています。

ここで学びたいのは、大胆に投資する姿勢だけではありません。成長の機会を探すことと、挑戦を続けられる資金の余力を守ることを、同時に考える必要があります。売上の期待だけを見て新規事業を進めると、成果が出る前に資金や人手が尽きることもあるからです。

筆者の考察として、ここでの「つなぐ」は、相手の強みを自社の都合に合わせて消すことではありません。どんな価値を一緒に届けるのかを揃えながら、それぞれが得意な役割を担える関係を考えることです。

図解では、利用者に技術やサービスが届く流れと、企業群へ投資する流れを分けて整理しました。投資先の事業が価値を生み、その成長が保有株式価値につながる構造に注目してみてください。

図解下部の「定説→逆説」は、比較の枠組みを編集上整理したものです。自社開発と企業群への投資のどちらかが常に正しいと断定するものでも、すべての投資先が同じ仕組みで連携すると示すものでもありません。

利用者、事業を担う企業群、ソフトバンクグループと資金提供者の関係を示すビジネスモデル図解
ビジネスモデルの仕組みを整理した図解

あなたの会社が、つなぐべき強みは何か

自社の強みと顧客の成果を結ぶ企画を話し合う場面

ソフトバンクグループのモデルから得られる学びは、「AIに投資すればよい」という単純なものではありません。すべてを自社で開発する前に、異なる企業の強みをどう組み合わせ、成長の機会と資金の負担をどう管理するか、という設計の視点です。

ここからは、仕事に使うための筆者の考察です。次の企画会議の前に、一枚の紙の上部へ「顧客に約束する価値」を書いてみてください。その下を、次の三つに分けます。

  1. 自社が担う役割。自分たちが磨くべき強みを書きます。
  2. 外部と組む役割。価値を届けるために足りない力を書きます。
  3. 今は手を出さない役割。資金や人手の余力を守るために、取り組まない範囲を書きます。

顧客が購入した後の流れまでたどると、商品そのものの改善だけでは埋まらない役割が見つかるかもしれません。最初から完成した計画をつくる必要はありません。まず書き出して、顧客の成果まで流れがつながっているかを確認することが、次の一手になります。

あなたの会社がもっとも磨くべき強みは何でしょうか。そして、その強みを顧客の成果につなげるために、誰の力が必要でしょうか。

参考

取得日はいずれも2026年10月04日。仕事への応用例と学びは、上記資料を踏まえた筆者の考察です。図解の比較の枠組みは編集上の整理であり、評価益と現金収入は区別しています。