この記事の要点
EAを選ぶとき、多くの人はバックテストの利益やプロフィットファクター(PF)を見ます。ところが、同じEAでも、使う口座のスプレッドによって成績は大きく変わります。とくに1分足のように取引回数の多いEAでは、その差が無視できません。この記事では、計算の例を使って、スプレッドと取引回数が成績にどう効くのかを確かめます。
スプレッドは「取引のたびにかかる費用」
スプレッドは、買値と売値の差です。ポジションを持った瞬間に、スプレッドの分だけ評価損益がマイナスから始まります。取引手数料がかかる口座では、スプレッドが狭い代わりに、1回ごとに手数料を払います。どちらの口座でも、1回の取引にかかるコストは「スプレッド+手数料」で考えます。
EURUSDでは、0.1ロット(1万通貨)の1pipsはおよそ1ドルです。ここでは計算を分かりやすくするため、0.1ロットで取引する前提で、コストをpipsとドルの両方で表します。
口座ごとの1回あたりのコスト(計算の前提)
| 口座のタイプ(例) | スプレッド | 手数料(往復) | 1回あたりのコスト |
|---|---|---|---|
| スプレッドが広めの口座 | 1.6pips | なし | 1.6pips(約1.6ドル) |
| 標準的な口座 | 1.0pips | なし | 1.0pips(約1.0ドル) |
| 手数料ありの狭い口座 | 0.2pips | 1ロットあたり7ドル → 0.1ロットで0.7ドル | 0.9pips(約0.9ドル) |
数字は計算のための例です。実際のスプレッドは、時間帯や相場の状況、FX会社や口座タイプによって変わります。
検証:同じロジックをコストだけ変えて比べる
次の2つのEAを考えます。どちらも勝率は55%で、利益と損失の比率(リスクリワード)も同じにしています。違うのは、1回の取引で狙う値幅と、取引回数だけです。
| EA A(1分足) | EA B(1時間足) | |
|---|---|---|
| 勝率 | 55% | 55% |
| コスト前の平均利益 | +8.0pips | +40pips |
| コスト前の平均損失 | -7.0pips | -35pips |
| 月の取引回数 | 200回 | 20回 |
コストは、勝った取引の利益を減らし、負けた取引の損失を増やします。たとえばコストが1.0pipsなら、EA Aの平均利益は7.0pips、平均損失は8.0pipsになります。この考え方で、PFと月の損益(0.1ロット)を計算した結果が次の表です。
EA A(1分足・月200回)
| 1回あたりのコスト | PF | 1回あたりの期待値 | 月の損益(0.1ロット) |
|---|---|---|---|
| 0pips(コストなし) | 1.40 | +1.25pips | +250ドル |
| 0.9pips | 1.10 | +0.35pips | +70ドル |
| 1.0pips | 1.07 | +0.25pips | +50ドル |
| 1.6pips | 0.91 | -0.35pips | -70ドル |
EA B(1時間足・月20回)
| 1回あたりのコスト | PF | 1回あたりの期待値 | 月の損益(0.1ロット) |
|---|---|---|---|
| 0pips(コストなし) | 1.40 | +6.25pips | +125ドル |
| 0.9pips | 1.33 | +5.35pips | +107ドル |
| 1.0pips | 1.32 | +5.25pips | +105ドル |
| 1.6pips | 1.28 | +4.65pips | +93ドル |
結果から分かること
- 1分足のEA Aは、コストで勝ち負けが入れ替わる:コストなしではPF1.40ですが、1.6pipsの口座ではPF0.91となり、月の損益はマイナスになります
- 1時間足のEA Bは、コストの影響が小さい:狙う値幅が大きいため、コストが1.6pipsでもPFは1.28を保っています
- 差を生むのは「1回の値幅に対するコストの割合」:8pipsを狙う取引で1.6pipsのコストは2割ですが、40pipsを狙う取引では4%です
- 取引回数はコストの総額を増やす:EA Aは月200回なので、コストが1.6pipsなら月に320ドル、1.0pipsなら200ドルをコストとして払う計算です
バックテストを見るときの注意
バックテストは、決まったスプレッドで計算されていることが多いです。販売ページのバックテストが狭いスプレッドで行われていると、自分の口座では同じ成績にならないことがあります。成績を見るときは、次の点を確かめると、思っていた結果と違うことが減ります。
- バックテストのスプレッドは何pipsで計算されているか
- 取引手数料が成績に含まれているか
- 月の取引回数と、1回の平均利益・平均損失は何pipsか
- 約定のずれ(スリッページ)の想定があるか
平均利益が数pipsしかないEAは、コストに弱いと考えておくのが安全です。バックテストの見方はバックテストの読み方でくわしく説明しています。
口座選びへの生かし方
取引回数の多いEAを使うなら、スプレッドだけでなく、手数料を合わせた1回あたりのコストで口座を比べます。スプレッドが狭い代わりに手数料がかかる口座は、取引回数が多いほど有利になりやすい計算です。一方で、取引回数の少ないEAなら、コストの差より、約定の安定や入出金のしやすさを重く見てもよいでしょう。各社の口座タイプとコストの違いはEA向け海外FX口座の比較にまとめています。
コストが増えるのはスプレッドだけではない
1回の取引にかかるコストは、表に出ているスプレッドと手数料だけではありません。次の2つも、同じように成績を削ります。
スプレッドが広がる時間帯
スプレッドは一定ではありません。早朝(日本時間の6時〜7時ごろ)や、重要な経済指標の発表の前後は、ふだんの数倍に広がることがあります。1分足のEAがこの時間帯にも取引すると、平均のコストは表のスプレッドより大きくなります。時間帯で取引を止める設定があるEAなら、その設定を確かめておくとよいでしょう。
約定のずれ(スリッページ)
注文した価格と、実際に約定した価格の差をスリッページといいます。相場が速く動いているときほど起きやすく、不利な方向にずれると、そのぶんコストが増えたのと同じになります。たとえば1回あたり平均0.2pipsずれるだけでも、EA Aの例では、コストが0.9pipsの口座で月の損益が+70ドルから+30ドルに減る計算です。
コストを下げると、どこまで変わるか
EA Aの例で、1回あたりのコストを1.6pipsから1.0pipsに下げると、月の損益は-70ドルから+50ドルに変わります。差は120ドルで、これは0.6pips×200回の分です。同じロジックでも、口座の選び方ひとつで、月の結果が逆になることがある、というのがこの計算の示すところです。
ロットを上げると、この差もそのまま大きくなります。0.1ロットで月120ドルの差なら、1ロットでは月1,200ドルの差です。運用の規模が大きいほど、口座のコストを比べる意味は大きくなります。
よくある質問
手数料ありの口座は、いつも得ですか?
いつもではありません。手数料ありの口座は、スプレッドが狭い代わりに手数料が決まってかかります。スプレッドの差が手数料より小さい通貨ペアや時間帯では、手数料なしの口座のほうが安くなることもあります。使う通貨ペアで、スプレッドと手数料を足した額を比べるのが確実です。
PEGASUS FXのような1分足のEAも、同じ考え方ですか?
考え方は同じです。取引回数が多いほど、1回あたりのコストの差が積み重なります。ナンピン型のEAは、ポジションが増えたときに複数のポジションをまとめて決済するため、ポジションの数だけコストがかかる点も覚えておくとよいでしょう。
計算の例について
この記事の数字は、仕組みを説明するための計算の例です。特定のEAの成績を示すものではありません。実際の成績は、相場の状況、スプレッドの広がり、約定のずれなどで変わります。


