この記事の要点
バックテストとは
バックテストは、過去の価格データを使って、EAが過去の相場でどんな成績になったかを試す方法です。MT4には「ストラテジーテスター」という機能が入っていて、パソコンの中で過去の相場を早送りしながらEAに取引をさせ、その結果をレポートにまとめてくれます。
EAを選ぶとき、販売ページに載っているバックテストの結果を見ることがよくあります。ただ、同じEAでも、試した期間・データ・スプレッドの設定によって結果は大きく変わります。数字を正しく読めるようになると、良く見せるために作られた結果と、実際の運用に近い結果を見分けやすくなります。
MT4でバックテストをする手順
- ストラテジーテスターを開く:MT4のメニューの「表示」から「ストラテジーテスター」を選ぶ(Ctrl+Rでも開く)
- EAと通貨ペアを選ぶ:エキスパートアドバイザーの欄でEA、通貨ペアの欄で試す通貨ペア(例:EURUSD)を選ぶ
- モデルを選ぶ:「全ティック」「コントロールポイント」「始値のみ」から選ぶ。1分足で細かく取引するEAは「全ティック」にする
- 期間とスプレッドを決める:「期間を指定」にチェックを入れて開始日と終了日を入れ、スプレッドは実際に使う口座に近い値にする
- 設定(パラメーター)を確認してスタート:「エキスパート設定」でロットなどを確かめ、「スタート」を押す
終わると、下の段に「結果」「グラフ」「レポート」のタブが出ます。レポートのタブを右クリックすると、レポートを保存できます。
レポートで必ず見る数字
| 項目 | 計算 | 見方 |
|---|---|---|
| 純益 | 総利益 − 総損失 | 期間全体でいくら増えたか。これだけで判断しない |
| PF(プロフィットファクター) | 総利益 ÷ 総損失 | 1より大きければ期間全体で利益。1に近いほど、少しの条件の違いで赤字になりやすい |
| 最大ドローダウン | 資金の山から谷までの最大の下げ幅 | 途中でどれだけ資金が減ったか。金額と%の両方を見る |
| リカバリーファクター | 純益 ÷ 最大ドローダウン | 落ち込みに対して、どれだけ利益を出せたか |
| 取引数 | 期間中の取引の数 | 少ないと、たまたまの結果の可能性が高い |
| 勝率 | 勝った取引 ÷ 全取引 | 高くても、1回の損失が大きければ全体では負ける |
| 平均利益・平均損失 | 1回あたりの利益と損失 | 平均損失が平均利益の何倍かを見る |
| 最大連敗 | 続けて負けた回数 | 連敗中に資金がどこまで減るかの目安 |
PF(プロフィットファクター)
PFは「総利益 ÷ 総損失」です。たとえば総利益が150万円、総損失が100万円なら、PFは1.5です。1.0を下回ると期間全体で赤字です。
PFは高いほど良く見えますが、取引数が少ないときや、期間が短いときは高く出やすい数字です。PFが極端に高いのに取引数が少ない結果は、たまたま相場に合った期間だけを切り出した可能性を疑います。
最大ドローダウン
最大ドローダウンは、資金が一番高かったところから、一番大きく減ったところまでの幅です。100万円から120万円に増えたあと、90万円まで減ったなら、ドローダウンは30万円(25%)です。
MT4のレポートには「最大ドローダウン」と「相対ドローダウン」が並びます。最大ドローダウンは金額が一番大きかった下げ、相対ドローダウンは割合(%)が一番大きかった下げです。資金が少ない時期の下げは、金額は小さくても割合は大きくなるため、両方を見ます。
リカバリーファクター
リカバリーファクターは「純益 ÷ 最大ドローダウン」です。純益が60万円、最大ドローダウンが20万円なら3.0です。大きいほど、途中の落ち込みに対して利益が大きかったことを表します。期間が長いほど大きくなりやすいので、同じくらいの期間の結果どうしで比べます。
例:2つのEAを比べる
| 項目 | EA-A | EA-B |
|---|---|---|
| 純益 | 80万円 | 50万円 |
| PF | 1.9 | 1.4 |
| 最大ドローダウン | 60万円 | 12万円 |
| リカバリーファクター | 1.3 | 4.2 |
| 取引数 | 120回 | 2,400回 |
数字は説明のための例です。純益とPFだけならEA-Aが上ですが、EA-Aは利益の多くを取るまでに資金を大きく減らしています。取引数も少なく、結果がたまたまの可能性も残ります。落ち込みの浅さと回数の多さでは、EA-Bのほうが読み取れることが多い結果です。
期待利得(1回の取引あたりの平均損益)
レポートの「期待利得」は、純益を取引数で割った、1回の取引あたりの平均の損益です。たとえば純益が50万円で取引数が2,500回なら、1回あたり200円です。この値が小さいEAは、スプレッドが少し広がったり、約定が少しずれたりしただけで、利益が消えてしまうことがあります。
1分足で取引回数の多いEAほど、期待利得は小さくなりがちです。期待利得と、1回の取引にかかる費用(スプレッドと手数料)を比べて、費用が上がっても利益が残るかを確かめておくと、口座選びの判断にも役立ちます。
モデリング品質とスプレッドの設定
レポートの上のほうに「モデリング品質」という数字があります。バックテストに使った価格データの細かさを表す目安で、「全ティック」で十分なデータがあると高い値になります。1分足で細かく取引するEAは、データが粗いと実際とはかけ離れた結果になることがあります。
スプレッドの設定も結果を大きく変えます。スプレッドを実際より狭くして試すと、取引のたびの費用が小さくなり、成績が良く見えます。取引回数の多いEAほど差が開くので、使う口座の普段のスプレッドに近い値で試すのが基本です。販売ページの結果を見るときは、どのスプレッドで試したかが書かれているかを確かめます。
ナンピン型のEAは「有効証拠金のグラフ」を見る
ナンピン型のEAは、逆に動いたときに注文を足していき、戻ったところでまとめて決済します。このため、決済した取引だけを並べると、ほとんどが勝ちで、損益のグラフはきれいな右肩上がりになりやすい仕組みです。
その裏で、まだ決済していない注文が大きな含み損を抱えている期間があります。レポートの「グラフ」のタブでは、残高の線と、含み損益を含めた有効証拠金の線が見られます。2本の線が大きく離れている期間は、含み損を抱えていた期間です。残高の線だけでなく、有効証拠金の線がどこまで下がったかを必ず確かめてください。
「最大ドローダウン」と当サイトの「最大含み損」の違い
バックテストの最大ドローダウンは、資金の推移の落ち込みを見る数字です。当サイトの運用実績では、デモ口座で日ごとに「その日のうちに一番大きくなった未決済の損失(最大含み損)」を記録しています。どちらも「どれだけ耐える必要があったか」を見るための数字ですが、計り方が違うため、そのまま比べることはできません。
過剰最適化を見抜く
EAの設定を、過去のデータで一番成績が良くなるように細かく合わせることを「最適化」と言います。合わせすぎると、過去の相場にだけぴったり合い、これからの相場では成績が落ちやすくなります。これを過剰最適化(カーブフィッティング)と呼びます。
- 期間を分けて試す:設定を決めた期間とは別の期間でも試し、成績が大きく崩れないかを見る
- 設定を少し動かす:設定の値を少し変えただけで成績が急に悪くなるなら、たまたま合った値の可能性がある
- 相場の違う時期を含める:上昇・下落・横ばいの時期をそれぞれ含めて試す
- 取引数を確かめる:取引数が少ないまま設定を細かく合わせた結果は信用しにくい
バックテストとフォワードテストを並べて見る
バックテストは過去の試算です。実際の運用では、スプレッドの広がり、約定のずれ(スリッページ)、週明けの窓開けなど、バックテストに表れにくいことが起きます。そこで、これから先の相場でデモ口座などを使って動かす「フォワードテスト」と並べて見ると、EAの癖がつかみやすくなります。
当サイトでは、自社EAのフォワードテストとして、デモ口座の成績を毎日公開しています。累計の確定損益と並べて、日ごとの最大含み損と全損の回数も載せているので、バックテストの数字と見比べてみてください。
販売ページのバックテストを見るときのコツ
EAの販売ページには、成績の良いバックテストの結果が載っていることが多くあります。載っている数字そのものより、「何が書かれていないか」に目を向けると、結果の確からしさを判断しやすくなります。
- 試した期間が書かれているか:数か月だけの結果は、たまたま相場に合った時期の可能性がある。数年分あるか、相場が荒れた時期(大きな下落や急な円高など)を含んでいるかを見る
- スプレッドの設定が書かれているか:書かれていない場合は、実際より狭い値で試している可能性を考えておく
- ロットと資金が書かれているか:同じEAでも、資金に対してロットを大きくすれば利益もドローダウンも大きくなる。推奨資金に対するロットで試した結果かを確かめる
- 有効証拠金のグラフがあるか:残高のグラフだけでは、含み損の深さはわからない
- レポートの全体が見られるか:グラフの画像だけでなく、取引数・最大ドローダウン・連敗などの数字が並んだレポートがあるか
反対に、損失が出た時期やドローダウンの大きさを隠さずに載せているEAは、それだけで判断の材料が多いと言えます。
よくある質問
Q. PFはどのくらいあれば良いですか?
決まった基準はありません。1を超えていれば期間全体で利益ですが、1に近いと少しの条件の違いで赤字になりやすくなります。PFは、取引数や期間、最大ドローダウンとあわせて見てください。
Q. 何年分のバックテストがあれば安心ですか?
期間が長いほど、いろいろな相場を含みやすくなります。年数よりも、上昇・下落・横ばい、急な値動きのあった時期を含んでいるかを確かめるほうが大切です。
Q. バックテストが良ければ、実際の運用でも同じ成績になりますか?
同じにはなりません。バックテストは過去の試算で、実際の運用ではスプレッドの広がりや約定のずれなどが起きます。デモ口座などでのフォワードテストと並べて判断してください。
バックテストを見るときのチェックリスト
- 試した期間は十分に長いか(数年分あるか)
- 取引数は十分か
- PFだけでなく、最大ドローダウンとリカバリーファクターも見たか
- スプレッドは実際の口座に近い値か
- ナンピン型なら、有効証拠金のグラフで含み損の大きさを見たか
- 別の期間でも成績が大きく崩れないか
- フォワードテスト(デモ口座など)の成績もあるか
まとめ
バックテストは、PF・最大ドローダウン・リカバリーファクター・取引数をセットで見ます。利益の大きさだけで判断せず、途中の落ち込みと、その数字が過去のデータに合わせすぎた結果でないかを確かめましょう。ナンピン型のEAでは、有効証拠金のグラフで含み損の深さを見ることが特に大切です。
EAの選び方の全体は他社のEAを選ぶときのチェックポイント、用語はFX用語辞典でも確かめられます。


